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2007年3月15日(第9号)

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アカデミー賞は逃しましたが見ておきたい映画

 「父親たちの星条旗」と「硫黄島からの手紙」

 昔々婚約時代に、雪に閉ざされたロッキー山脈のリゾート・ホテルで霊に取り付かれた男が斧で奥さんと息子を殺すこわ〜い映画(シャイニング)に誘ってからというもの、家内は私とは趣味が合わないと言い続けています。そんな訳で、長い間、映画音痴の生活を送ってきた私たちですが、先日のアカデミー賞は、「バベル」の菊池稟子(助演女優賞)と渡辺謙主演の「硫黄島からの手紙」(作品賞)がノミネートされたというので、久しぶりに注目しました。

 ご存知の方も多いことでしょうが、受賞は逃したものの、クリント・イーストウッド監督の「硫黄島の手紙」と「父親たちの星条旗」の二部作は、イラク戦争に厭戦気分をつのらせるアメリカ国民の共感を得たそうでマスコミに絶賛されました。映画批評などは恐れ多くてできる筈もありませんが、特に、私たちのようにアメリカで暮らす日本人にとって必見の映画ではないかと思ったので大筋をご紹介します。

 小笠原諸島の硫黄島は、グァムやサイパンと日本本土の中間に位置する防空拠点でした。太平洋戦争末期1945年2月19日に始まった地上戦で、日本軍は20,129名の戦死者(生還者804名)を出したものの36日間抵抗を続け、アメリカ軍も一作戦としては史上最多の犠牲者(戦死6,821名、戦傷21,865名)を出します。「硫黄島からの手紙」は従来になく戦いを、敵国側の視点で、日本兵も家族を守るために戦ったのだと主張しています。私たち日本人には今更教わるような事実ではありませんが、アメリカ人には新鮮な発想の転換なのかもしれません。国際世論に逆らって、イラク戦争を正当化してきたブッシュ政権にとっては、国民に与える影響の大きいハリウッドからの痛撃です。

 「父親たちの星条旗」は、同じ戦いをアメリカ軍側から見たものですが、これも英雄として偶像化とされた3兵士のトラウマ(心的外傷)を描いた反戦メッセージです。6名の兵士が硫黄島の山頂に星条旗を立てた瞬間の写真は劇的な構図で全米の新聞のトップを飾り、その後、ワシントンDCの海兵隊記念碑にもなりました。そのうち3人はその後の戦闘で亡くなりましたが、生き残った3人は英雄として凱旋し各地で歓待されるのですが、有名になった旗は、実は2本目だったのです。国民の士気を高めるため、3人は利用されました…亡くなったうちのひとりは、ケンタッキー州フレミング・カウンティー(レキシントンの北西60マイル)の出身で、今年も旗が立った2月24日には地元で記念式典が行われたそうです。

 そして「硫黄島からの手紙」。硫黄島の日本軍が長く持ちこたえたのは、留学経験でアメリカの軍事力を知り尽くした司令官栗林中将(渡辺謙)が、死に急ぐことなく、あらかじめ島中に掘った地下壕に身を潜めてアメリカ軍を襲うゲリラ戦法を採ったからです。「私たちの子供らが日本で1日でも長く安泰に暮らせるなら、私たちがこの島を守る1日には意義があるのです」という栗林中将の願いも空しく、飛行場を制圧したアメリカ軍は、3月10日の東京大空襲以降、B-29の大編隊による民間人を標的にした大規模な市街地攻撃を始めました。(原爆も含め)明らかな戦争犯罪です。

 敗戦国日本で、戦後に生まれた私たち団塊の世代は幸せに育ってきました。戦勝国のアメリカは戦争体験を反省する機会に恵まれず、同世代のベビーブーマーの若者を徴兵してベトナムに送り、今また21世紀に入ってもイラクで戦争を起こしています。自分は正しいと信じ他人のいうことを聞かない幼児のようなところがありますが、保守派の多いハリウッドからこのような映画が出てきたことは歓迎すべき変化の兆しに違いありません。

 「父親たちの星条旗」のDVDは、もうレンタルで借りられます。「硫黄島からの手紙」の方は、5月の下旬までリリースされないとのこと…ちょっと遅いな?と怪しんだのですが、メモリアル・デイ(5月の第4月曜日)に合わせての調整に違いありません。メモリアル・デイ(戦没将兵追悼記念日)には、テレビで、日本やドイツが痛めつけられる映画を一日中繰り返し放映するのが常です。

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