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2007年3月15日(第9号)

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地震、雷、トルネード(竜巻)

 油断は大敵、ケンタッキーにも来る時は来ます

 私たちは、1995年に赴任して以来ずっとレキシントンの南西の片隅に住んでいるのですが、昔は家から車で10分もかからない所に焼肉屋さんがありました。ある日、家族旅行の帰りに夕食を食べようと立ち寄ったのですが、空が異様に明るかったのを覚えています。風もなく快晴でした。でも、店内に入ると従業員がテレビの前に集まっています。聞くと「トルネード(竜巻)がやってくる」…天気予報のドップラー・レーダー画面には、西の方から真っ赤な雨の固まりが迫ってきています。帰ろうとしたのですが「まだ時間はある」と引き留められました。

 食事中は、少し曇ってきたものの穏やかな天気が続いていました。「もっとゆっくり食べても間に合ったね」と外に出たとき、大粒の雨が降り出しました。ところが、車がハロッズバーグ通に出た瞬間(@の地点)ラジオが警報音を鳴らしました。「後10分で竜巻がハロッズバーグ通とマノワー通の交差点に来ます(Aの地点)、ピーッピーッ」。自宅までは5〜6分、迷う間もなく竜巻に向かって進むことにしました。道路に水がたまってスピードを出そうにも出せません。車通りが少ないのは幸いでしたが、交差点ではみんな信号を無視して走っていました。時間が長く感じられました。家に着くと、毛布を持って地下室に駆け込みました。

 翌朝、サブディビジョンの大きな木が真ん中で折れてハロッズバーグ通をふさいでいました。結局、竜巻はタッチダウン(着地)しなかったのかもしれません。私の判断は結果的には正解でしたが、本当は焼肉屋に戻るべきだったかもしれません。一つ間違えたら命に関わります。天気予報は注意して見ていましょう。天気が荒れ模様の日には、カー・ラジオは必ず点けておきましょう。

 竜巻に関して言えば、ケンタッキーは最も危ない地域ではなさそうです。1996年の映画「Twister(竜巻の別称)」の舞台はオクラホマ州。ネブラスカからカンザス、オクラホマを経てテキサス北部の一帯が竜巻街道と呼ばれる竜巻の多発地帯です。竜巻は、1971年にシカゴ大学の藤田教授が定めたF0〜F5のスケールで表されますが、F4やF5などとんでもなく強いクラスの竜巻が多いのもやはり竜巻街道の一帯です。

 そうは言っても、2005年11月6日にケンタッキーの州境からトヨタのインディアナ工場に近いエバンズビルを襲った竜巻は25名という多数の死者を出しました。F3級だったのですが、深夜にモービル・ホーム・パークを直撃したために、園内350軒のうち100軒が全壊、125軒が半壊、怪我人も200人を超えたのだそうです。フジタ・スケールを見たら明らかですが、モービル・ホームのようなパネルを貼り合わせただけの建物はF3で吹き飛ばされてペシャンコになります。キャンプ地を襲った竜巻が大惨事を引き起こすこともあります。他人事だと思って、油断してはいけません。

 それどころか、後に「スーパー・アウトブレーク」と名付けられることになった1974年4月3〜4日の竜巻の「大発生」はケンタッキー周辺が起点だったのですから、これは肝に銘じてください。今後も、似たような気象条件がそろう可能性はあるわけです。この時は、南部から中西部の13州でF5級6本とF4級24本を含む148本の竜巻が18時間にわたって発生、330人近い死亡者を出しカナダに至りました。ケンタッキーでは、26本の竜巻で計77人が死亡、1,377人が負傷しました。

中でも、ルイビルの南南西30マイルにあるブランデンバーグは今でも2千人足らずの小さな町ですが、幅500ヤードのF5級に襲われ31名が亡くなったと伝えられています。私のアメリカ人の友人は、ルイビルのビルの中で竜巻が近付いてくるのを目撃しました。右の図は、その日の各竜巻の発生状況を記録したものです。こわいですね。

 アメリカで観測史上最悪の竜巻は1925年3月18日にミズーリ、イリノイ、インディアナの3州を中心に襲った「Tri-State Tornado」と言われています。死亡者695名、移動距離219マイル(352q)、持続時間3.5時間、時速73マイル(117q/h)の記録は、いずれも更新されていません。この時も、ケンタッキーは無事ではありませんでした。州内で19名の方が亡くなっています。4本の竜巻のうち1本はレキシントンを襲いました。

 先日、オクラホマから越してきた方が「竜巻警報のサイレンが鳴らないのが嘘のよう」とおっしゃっていましたが、竜巻街道の家屋には、防空壕のような竜巻退避壕や地下室がしっかり備わっているようです。それに比べると、ケンタッキーの家は竜巻に無防備ですから、いざという時には、あらかじめ決めおいた家中で一番安全そうな場所に毛布にくるまって身を潜めましょう。外出中でも、何とかして最寄の建物に避難すべきです。車の中は野外にいるより危険なようです。雷雨の時には危ないと分かっていても木陰に身を寄せたくなってしまいますが、高速道路の陸橋の下など構造物の物陰は竜巻の時には複雑な風が吹いて実は危険な場所だそうです。

 竜巻は一年中起きますが、春先には特に頻発します。今年も、3月2日にアラバマの高校を襲った竜巻で5人の生徒が死亡しました。避難誘導が悪く被害を大きくしてしまったようですが、校舎は意外にきゃしゃな建物です。渡米後間もないお子様には、竜巻のこわさを教えておいた方がよいかもしれません。スーパーなど大きな屋根を持つ構造物もしばしば被害をこうむります。日系企業の工場の屋根が吹き飛ばされたこともあります。たいていの工場では、洗面所が竜巻の避難所に指定されていると思います。

 最後に、蛇足ですが、トルネード(Tornado)の語源を調べてみました。語感から、アメリカ原住民(インディアン)の言葉と推測していたのですが間違いでした。スペイン語の嵐=「Tronada」が、16世紀にイギリス船員の間で熱帯性暴風雨=「Ternado」と変化し、19世紀初頭にアメリカで竜巻を表す言葉として使われるようになったと言われています。

フジタ・スケール(竜巻の強度)

今年の2月1日に改良フジタ・スケール(Enhanced Fujita Scale)が導入されました。

EF0

風速

時速65〜85マイル

/秒速29〜38m

旧F0

時速73マイル

/秒速32m

被害状況

軽微。一部の屋根がはがれる。樋(とい)や側壁の羽目板が壊れる。木の枝が折れる。根の浅い木が倒される。

EF1

風速

時速86〜110マイル

/秒速39〜49m

旧F1

時速73〜112マイル

/秒速33〜49m

被害状況

中程度。ひどく屋根がはがれる。モービル・ホームはひっくり返るかひどく損傷する。外壁のドアは吹き飛び、窓などガラス類は割れる。

EF2

風速

時速111〜135マイル

/秒速 50〜61m

旧F2

時速113〜157マイル

/秒速50〜69m

被害状況

かなりの被害。丈夫な家の屋根もはがれる。一般の家が基礎を外れて移動する。モービル・ホームは全壊する。大木が折れ根こそぎ倒れる。軽い物体はミサイルのように飛ぶ。車は宙に浮く。

EF3

風速

時速136〜165マイル

/秒速62〜74m

旧F3

時速158〜206マイル

/秒速70〜92m

被害状況

深刻な被害。丈夫な家でも全階が破壊される。ショッピング・モールのような大きな建物にも深刻な被害。列車は転覆。木はなぎ倒され、重い車両も宙に浮いて飛ぶ。基礎の弱い構造物はかなりの距離を吹き飛ばされる。

EF4

風速

時速166〜200マイル

/秒速75〜89m

旧F4

時速207〜260マイル

/秒速93〜116m

被害状況

壊滅的被害。丈夫な家でも全壊する。車は小型ミサイルのように吹き飛ばされる。

EF5

風速

時速200マイル超

/秒速89m超

旧F5

時速261〜318マイル

/秒速117〜141m

被害状況

信じがたい被害。堅固な構造の家屋も基礎から吹き飛ばされ跡形もなくなる。自動車大の物体がミサイルのように100メートル以上を宙を舞って飛び交う。高層ビルも著しい損傷をこうむる。想定外の事象が起きる。

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