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アメリカ生活・e-ニュース

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2007年6月15日(第12号)

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アメリカ人と宗教について

 @バイブル・ベルトとサザン・バプティスト

 日曜の昼に外食に行くと、どこもかしこも教会帰りの着飾った家族で混んでいますね。大都市や一部の地域は別ですが、アメリカにはキリスト教信者がいっぱいいます。銀行時代に私の秘書を務めてくれた女性は、残念ながら先年亡くなってしまいましたが、敬虔なキリスト教徒で面倒なことを頼んでもいつも笑顔で引き受けてくれたものです。都会のストレスの中で暮らしてきた私などは感情をすぐ表に出してしまう方でしたが、ケンタッキーに来てからは周囲の影響で少し性格が丸くなったのではないかと思ったりしています。

 一口にキリスト教といっても、様々な宗派があり、それぞれの教理に違いがあります。私自身は無宗教ですが、アメリカに住んでいるのですから、アメリカ人と宗教について皆さんとご一緒に少し勉強してみたいと思います。Pew Research Center(非営利の世論調査機関)の資料が人種別の信仰をよく表しているので表に引用しましたが、資料によって宗派の呼び方は英語でもまちまちでPew Research Centerの用語をそのまま使いました。日本語には、私が最も妥当と思う訳語を用いました。

アメリカ人のキリスト教の宗派別人口比

信仰する宗教 白人 黒人 ヒスパニック
カトリック Catholic 22.4% 4.2% 67.6%
プロテスタント Protestant 57.1% 82.9% 21.5%
福音主義 バプティスト派  Baptist 16.7% 46.2% 3.1%
独立/非宗派グループ  Independent/Nondenominational 6.2% 6.1% 3.0%
ペンテコステ派  Pentecostal 3.2% 10.3% 6.9%

福音主義プロテスタント 計

26.1% 62.6% 13.0%
主流 メソジスト派  Methodist 9.2% 5.4% 0.3%
ルター派*  Lutheran 6.3% 0.0% 0.2%
会衆派(組合教会)  Congregational/Church of Christ 2.2% 3.1% 0.7%
長老派*  Presbyterian 3.4% 2.8% 0.3%
改革派  Reformed 0.6% 0.0% 0.0%
聖公会派  Episcopalian 1.7% 0.4% 0.2%

プロテスタント主流 計

23.4% 11.7% 1.7%

その他

(うちエホバの証人)

 Something Else

(Jehovah's Witness)

3.8%

(NA)

5.4%

(NA)

4.2%

(1.9%)

無所属

 Nothing in Particular 3.7% 3.2% 1.5%

回答なし

 DK/Refused 0.1% 0.0% 1.1%
モルモン教 Mormon (Latter Day Saints) 1.7% 0.0% 0.7%
正教 Orthodox 0.6% 0.0% 0.1%
キリスト教以外 Other Faith 4.8% 3.7% 0.9%
無宗教 Secuar 11.4% 7.7% 7.8%
回答なし DK/Refused 2.1% 1.4% 1.1%

資料:Denominational Distribution by Race/Ethnicity (Pew 2006 U.S. Religion Survey)

     *大部分は主流に分類されますが、福音主義のグループもあるようです。

 ところで、16世紀の宗教改革から、法王を頂点とするカトリック教会の枠組みに抗議してルター派やカルヴィン派のプロテスタント各派が枝分かれしたのは皆さんよくご存知ですね。でも、その後、聖職者の導きより聖書の教えを絶対視する福音主義(Evangelicalism)の各派が生まれてきたのもご存知ですか?人間も他の生物も全て神様がお創りになったとして、進化論を否定する信者が多いのも福音主義のプロテスタントです。宗教は人の心の問題ですから、どの宗派は何々と言い切れないところもありますが、表では、バプティスト派、復興主義派、ペンテコステ派の3つを福音主義として分類しました。

 人種別に見ると、白人は、カトリック教徒、福音主義、プロテスタント主流、その他(その他の宗派/宗教の信者・無宗教者)のグループが、それぞれほぼ四分の一の勢力で拮抗していますが、黒人は6割が福音主義のプロテスタントで、ヒス

パニックの7割はカトリック教徒です。

 さて、ここで今回の本題です。各宗派の地理的な分布についてお話しましょう。カトリックは、プロテスタントに信者の総数ではかないませんが、1宗派として見れば、何といっても最大宗教組織で全米に広く分布しています。ケネディー家などアイルランド系移民が多いニューイングランド地方で強く、政治的には民主党リベラルを支えています。特に人口比で信者が多いのは地図で黄色で示した地域ですが、メキシカンが多い南部カリフォルニアやメキシコ国境沿いも含まれています。

 カトリックに数で対抗できるのは、福音主義のプロテスタント、中でもバプティスト派です。ケンタッキーも含むアメリカ南部の一帯は、福音主義のプロテスタントが大勢住んでおり「バイブル・ベルト」と呼ばれいます。地図上で赤く塗り分けた地域です。妊娠中絶を否定する共和党保守派の強力な支持基盤で、2000年と2004年の大統領選挙でブッシュ政権の誕生と再選の原動力となりました。中でも最大勢力の「サザン・バプティスト連盟」が本拠を置くテネシー州のナッシュビルは「バイブル・ベルトのバックル」とも呼ばれることもあります。

 実は敬虔なキリスト教徒が多いのは、北はノースダコタ州から南はテキサス州を結ぶ「バイブル・ストリップ」だという説もあるように、大西洋沿岸の諸州は同じ南部でも信仰の篤い地域だという訳ではなく、「バイブル・ベルト」とはやはりサザン・バプティストの牙城を指す名前だと理解すべきなのでしょう。

 バプティスト派は、イギリス国教会と対立し新天地をアメリカに求めた清教徒(ピューリタン)の流れを汲むプロテスタントです。形だけの幼児洗礼を否定して、信者はしっかり物心がついてから自ら洗礼(Baptism)を望みキリスト教徒になるという厳格な考え方をしています。牧師も平信徒も神の前には平等で、教会の役職者も信者総会で選ばれる民主主義的なシステムです。

 ある日、「貴方はどの宗派ですか?」という私の質問に「クリスチャンです」と答える人がいて、「???」と思ったことがありますが、そもそも真のキリスト教徒に派閥は存在しないと考える人々がいます。内規など必要なことは各々の教会が独自に定めます。宗派に分かれていなかった初期の教会の精神に戻ろうというので、復興主義(Restorationism)に分類されるグループも含まれます。表中では、独立/非宗派グループとしました。

 ペンテコステ派は、キリスト昇天の後、聖霊が使徒たちに宣教のため外国語を話す力を賜ったという聖霊降臨(ペンテコステ)の奇跡の伝えが信仰の拠り所にあるようです。本当は私のような部外者が勝手に想像することは避けるべきなのですが、この宗派にはどちらかというと感性に訴えるところが強いのでしょうか?様々な賛美歌やゴスペル・ソングを生み出し、さらにエルビス・プレスリーらを通じて現代音楽に強い影響を与えました。

 福音主義のキリスト教徒は、非妥協的な性向があります。中には、キリスト教原理主義と呼ばれるほど急進的な考え方を持つグループもあり、表では、おそらく大半がその他プロテスタントに分類されているのではないかと思います。逆に、16世紀の宗教改革をリードしたルター派やカルヴィン派、イギリス国教会に近い考え方をしているプロテスタントは「主流」と呼ばれており、信者は、中西部の宗派混在地帯にカトリックとともに広く分布しています。

 他のキリスト教信者には異端視されているモルモン教の信者は、ユタ州とアイダホ州の南部に偏在しています。西海岸北部のワシントン州やオレゴン州などには無宗教の人々が多く「無教会ベルト」と呼ばれることもあるそうです。

 長くなりますので、福音主義プロテスタント以外の宗派やキリスト教以外の宗教については、また次の機会に勉強したいと思います。