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2012年6月15日(第72号)


総領事館は海外在留邦人の市役所

 住民票」は「在留証明」・「印鑑証明」は「サイン証明

 母が亡くなり小額の預貯金を相続する手続きが必要になりました。私は元銀行員で相続事務にも精通していますから、海外在留の身で、手続きがやっかいになることは覚悟していました。

 しかし、実際に困らされたのは、幸いゆうちょ銀行の窓口だけでした。ゆうちょ銀行の支店では、全く相手にしてもらえません。数日で帰米しなければならない事情を説明しても、「担当部署の郵送による連絡を待て」の一点張りで、一時帰国の期間中に本人確認が必要な書類を受け付けてもらうことができませんでした。

 民間金融機関では、海外在留邦人の立場をよく理解して、パスポートや現地運転免許証などで本人確認の手続きをして、必要な書類を受理してくれました。

 後日、代表相続人に指定した姉から、ゆうちょ銀行が「在留証明」と「サイン証明」を提出するよう通知してきたと連絡がありました。想定内のおざなりな対応です。


 今回のゆうちょ銀行のケースは、(民間金融機関の視点に立って批判すると)必ずしも必要でない書類を求め消費者に迷惑をかける最低の対応ですが、それは例外としても、海外在留邦人が日本の不動産を売買する場合など「住民票」や「印鑑証明」がなくて困るケースがあります。そのような場合に、代わりになるのが、総領事館が発行してくれる「在留証明」や「署名(サイン)証明」です。いわば、総領事館は、海外在留邦人の市役所の役目を負っています。

 ただし、「在留証明」は郵送で依頼できますが、「署名(サイン)証明」は郵送で依頼できないので極めて不便です。実は、私が住んでいるケンタッキー州を管轄するナッシュビル総領事館は、2007年までは遠くニューオリンズにあったせいで、「署名(サイン)証明」の郵送申請も受け付けていました。今年から、本省(外務省)の指導で郵送申請を廃止したばかりです。

 したがって、署名(サイン)証明を手に入れるためには、管轄総領事館に出向いて署名するか、または、年に2回の領事出張サービスの機会を待って出張官の面前で書類に署名するか、二つに一つの選択しかありません。

 領事出張サービスの目的は、パスポートの更新や在外選挙人登録のためと説明されていますが、目的外の署名(サイン)証明の依頼も受け付けてくれるそうです。


 ナッシュビル総領事館ホームページによれば、総領事館が発行する各種証明書は以下の通りです。

在留証明書(1通につき$15)

外国のどこに住 所(生活の本拠)を有しているかを証明するものです。恩給・年金受給、不動産登記、遺産相続、日本の学校での受験等の手続に使われます。

署名証明書(1通につき$21)

日本での印鑑証明に代わるものとして、本人の署名(及び拇印)であることに間違いないことを証明するものです。日本での遺産相続、不動産登記、銀行ローン、自動車名義変更等に使われます。

警察証明書(手数料不要)

日本での犯罪歴の有無を証明するものです。申請から交付まで約2ヶ月を要します。

自動車運転免許抜粋証明(1通につき$26)

日本の有効な運転免許証の必要な部分を抜粋し、英文に翻訳した証明です。

英文の身分事項証明書(出生証明書、婚姻証明書等:各$15)

外国の官公署等に提出するために必要で、日本国籍者の戸籍に記載されている身分、申請者本人の出生、婚姻、離婚等の事実を証明する英文の証明書です。

 在留証明書を取得するには、運転免許証がなければ、光熱費のインボイス(請求書)や銀行のステートメント(取引明細書)を提示する必要があります。郵送で依頼する場合には、返信用切手とともに、手数料をマネーオーダーにして同封しなければなりません。マネーオーダーは、郵便局のほかスーパーなどで発行してもらうこともできます。お取引銀行では手数料なしで発行してもらえるかもしれませんが、キャッシャーズチェック(自己宛小切手)やサーティファイドチェック(支払保証小切手)とは違いますから、注意してください。

 領事出張サービスの場合には、あらかじめ提示書類のコピーを提出したり、その場では証明書を発行してもらえないので、郵送に使う返信用の切手を持参するように言われました。手数料は、小切手やクレジットカードでは受け付けてもらえませんから、現金でおつりのないように持っていきましょう。

====== ≪さて、ここからは蛇足ですが …≫ ======

 さて、私たちは、これから機会あるごとに、総領事館や国民生活センター・消費者庁を通じて、海外在留邦人の生活改善に前向きな提言をしていきたいと思っています。今はゆうちょ銀行や総領事館の事務を受け入れるしかありませんが、誰も問題点を指摘しないと、海外で活躍する日本人の足を引っ張るようなシステムがいつまで経っても改善されません。どこまでできるか分かりませんが、皆さんも応援してください。

 以前のナッシュビル総領事館は、現地公証人が発行したサイン証明に基づき、あらためて署名(サイン)証明を発行していました。これでも手続きに支障はないと思うのですが、それが駄目なら、例えば、外務省経由で派遣されている補習校の校長先生や信頼できる民間人に公証事務を委託する工夫をしてもいいのではないでしょうか?

 消費者基本法の第二条(基本理念)には、「消費者政策の推進は、消費生活における国際化の進展にかんがみ、国際的な連携を確保しつつ行われなければならない。」とあります。

 ゆうちょ銀行は民営化したはずなのに、未だに消費者の急ぎの照会を門前払いするような文化を引きずっているのは情けない限りです。一方で、日系企業が、果てしないカイゼンに取り組んで外国勢と戦っている現実を知ってほしいものです。

 そういえば、しばらく前に、ゆうちょ銀行や民間金融機関の休眠口座のお金を没収して、国の予算の足しにしようというせこい話に飛びつく議員がいると報道されたことがあります。しかし、小額相続でも戸籍謄本などで役所に払うお金が何万円もかかれば、あきらめて放置される休眠口座が減ることはありません。せめて、手間はかかってもお金がかからない相続手続きを検討してもらうことが先決です。


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