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2012年7月15日(第73号)


熱波でデレーチョ(直線嵐)と大停電、トウモロコシ・大豆の凶作

 アメリカ的熱中症対策と幼児車中置去り事故の注意

 アメリカ生活を存分に楽しむなら、たまには現地マスコミの報道を通じて、ナマのアメリカの日常に触れてみませんか。このコーナーでは、毎月、現地マスコミの動画ニュースの中から皆さんのご興味をひきそうな話題を選んで、日本語解説付きでごらんいただきます。


 6月はノースウェスト地方を除き、アメリカ本土のほとんどの地域で記録的な猛暑に襲われ、年間最高気温や月間最高気温を更新する都市が続出しました。全米でも、今年前半6ヶ月の気温は史上最高を記録したそうです。

 華氏で三桁、あるいは体温を越える暑さが全米規模で何日も続いたら、何か異常気象が起きない方が不思議です。コロラドでは早くから山火事が続いていましたが、月末近くに、デレーチョ(Derecho)と呼ばれる嵐が南部や中西部の各地を襲い、中でも6月29日のデレーチョはイリノイからバージニアに駆け抜け、22名の死者と340万戸の停電をもたらしました。

629日 中西部-中部大西洋岸デレーチョの1時間ごとのレーダー映像(時速60マイル)

典型的なデレーチョの雲

 私が住むレキシントンはこの日こそ無事に過ぎたものの、翌日の夜の嵐は今までに目にしたことのない不気味な気象でした。無風に近い状態から、急に熱風が雨を伴わずに吹きつけてきたのです(おそらくヒートバーストという現象)。しばらくすると、今度はあらためたように大人しい雨が降り出し、気温も下がって文字通りの干天の慈雨となりましたが、翌朝、近所の2軒の庭で、直径20cmの木が幹から折れて倒れているのを発見しました。

 正直な話、これまでデレーチョという言葉は聞いたこともなく、当初はいつもの雷雨スペシャル程度の認識でしたが、デレーチョとはスペイン語で「ストレート」…雷雨のセル(積乱雲の塊)が一直線に帯状に伸び、各地に強烈なダウンバースト(下降噴流)を起こしながら高速で移動します。

 風速50ノット(26m/秒)以上で全長400q以上の雷雨が最低6時間続くと、デレーチョと認定されます。今回は、デレーチョ自身のスピードが時速60マイル(秒速27m)だったのですから、仮にダウンバーストがなくても風速27m/秒…インディアナのフォートウェイン空港で風速40m/秒を計測したのも当然です。

 レキシントンは最も被害が少なかった方で、オハイオのコロンバス(YouTube動画)など読者の皆さんの中には、もっと怖い思いをなさった方も大勢おられるのではないでしょうか?今年の夏は、雷雨警報でも、竜巻警報並みに警戒し、いざとなったら建物の安全な場所に避難しましょう。


7月2日…熱波と中西部-中大西洋岸デレーチョの大停電

7月12日…1988年来の干ばつでトウモロコシ・大豆が大凶作

7月9日…アメリカの家でお勧めの省エネ・熱中症対策

6月28日…父親が車にうっかり置き去り幼児が熱中死


7月2日…熱波と中西部-中大西洋岸デレーチョの大停電

File:Heat Wave.jpg 6月の熱波は、北米の上空に高気圧が居座り、地表に向けて吹き下りる風が帽子のように熱気を閉じ込めて発生したそうです。対流さえ起きにくく、雨をもたらす積乱雲が形成されることもありませんでした。

 日本の多雨など世界各地の異常気象とも関連はあるのでしょうが、根本的な発生原因は解明されていません。

 7月に入り、高気圧の中心は西に移動し、東部・南東部はようやくしのげる暑さになって来ましたが、山岳部と南西部では、引き続き一層の熱波に注意が必要です。


7月12日…1988年来の干ばつでトウモロコシと大豆が大凶作

 コーンベルトの広範な地域で干ばつが悪化し、今年のトウモロコシの30%が「不良」または「極めて不良」に分類される深刻な事態となっています。上の動画に登場するのはシカゴ近郊のイリノイ州シャナハンの農家…インディアナあたりに比べたら少しはマシなはずですが、それでも、この時期に8フィート(2.4m)の背丈があるはずのトウモロコシが今年はたった4フィート(1.2m)。収量は例年の2〜3%にしかならないという惨状です。

 市場ではトウモロコシの相場が高騰。5月にはブッシェル5ドル台だった先物が、今は市場最高値に迫り、すぐにも8ドルの大台を越えそうな気配です(ウォールストリートジャーナル図表記事と動画ニュース)。しばらくすれば、トウモロコシ関連食品が値上がりするのは間違いないでしょう

 スイートコーンの栽培は、干ばつ被害がまだまだ軽い方のミネソタやウィスコンシンが中心…スーパーで食用トウモロコシやコーンフレークが値上がりしていないからといって安心してはおられません。最も懸念されるのは、トウモロコシをエサにしている家畜の減産。農場に牧草さえ生えない状況ですから、肉類は必ず値上がりします。 

各地の干ばつ状況推移…3秒ごとに地図が変化

6月5日〜7月10日(D0 D1 D2 D3 D4)

 大豆の農地はコーンベルトとほぼ完全に重なっていますから、動画にも出てくる通り、大豆の干ばつ被害も負けず劣らず深刻です。日本では、早くも植物油を値上げする動きが出ています(7月13日TBS)。この分では、近いうちにお豆腐も高くなりそうですね。

トウモロコシの農地(スイートコーン)

大豆の農地

 お米の産地アーカンソー州の干ばつがひどいのも気にかかります。去年はミシシッピー川で記録的な大洪水があったばかりですから、春先に貯めた貯水池の水も心持ち控えめ。このままでは十分持つか心配です。

 冬小麦の産地カンザスも記録的な少雨で、5月には不作が懸念されていました。市場はその後も小康状態でしたが、ロシアで凶作のニュースも伝えられ、このところ急激に高騰しています。


7月9日…アメリカの家でお勧めの省エネ・熱中症対策


 冬には、フリージングレインで各地で電線が切れて停電、厳冬下で暖房なしに何日も耐えなければならないことがあります。こちらは、17年間に2回も体験したことがありますが、今回のような夏の大停電は、これまで聞いたことがありませんでした。熱波の下で何日も冷房と冷蔵庫なしに過ごすのは、冬のケースよりも、もっと怖いかもしれません。根本的な対策といえば、電気が回復するまで避難して、停電していない地域のホテルやお知り合いの家に泊まることしかありません。

 冬は暖炉や石油ストーブで少しは暖まりますが、自宅でできる夏の対策は、氷を買ってきて氷水にタオルを漬け頭を冷やすとか、電池式の扇風機を使うとか、心細い対策しかないようです。冷蔵庫は、ドアを開けずにおいても、冷気を保てるのは4時間が限度といわれています。

 電池式の扇風機は、乾電池8本で最長40時間持つと書いてありましたが、停電が始まってから買いに行くのでは遅すぎます。扇風機の前に、氷を置くと、より効果的です。

 ところで、上の動画では、停電時に限らず、アメリカの家で心がけたい暑さ対策を二つ紹介しています。一つは、パソコンやテレビ、電灯などの熱源の電気をできるだけ落とすことで、皆さんも既に実行なさっておられるかもしれませんが、もう一つはブラインドの閉め方です。向きが肝心…ブラインドの桟(スラット)の屋外側が、上を向くように閉めた方が断熱効果が上がります。皆さんも参考になさってください。 

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 私たちのホームページでも、暑さ対策は「家事とお料理・e-百科」のページの記事「換気と省エネ」で、いくつか紹介しています。

 天井扇があるお宅では、外出時でも、日中は全ての天井扇を回し続けておいた方が、屋内の気温が均等化してよいようです。

 また、玄関が南向きのお宅では、直射日光でガレージが温室となり、隣接する部屋や2階の部屋まで加熱されてしまいます。

 ご在宅時に、ガレージ・ドアのすそを、ほんの30cmほど上げて風の通り道を作っておけば、ガレージの温度上昇は抑えられますから、お試しください。

 ガレージドアを上げきって開けっ放しにしておくのは見掛けも悪く、たとえ犯罪の少ない地域でもお勧めすることはできません。ガレージと屋内を隔てるドアの戸締りも忘れないように注意してください。


6月28日…父親が車にうっかり置き去り幼児が熱中死

 ケンタッキーの南部ロンドンという町で、2歳の幼児が車の中に2時間放置されて、熱中症で死亡しました。車に置き去りにしたのは、31歳のお父さん。出勤途中に息子を保育園に預ける手筈でしたが、最愛の息子が後部座席で眠っているのを忘れ、うっかり直接出社して仕事についてしまいました。お父さんは逮捕されて、過失罪に問われています。

 アメリカでは、毎夏、このような悲しい事故が数多く繰り返されています。昨年は33件、今年も既に6人の幼児の死亡が報告されており、そのうちの半数が保護者に置き去りにされたケースです。ほとんどが今回と同様で、別の行き先があり、ついでにどこかに子供を預けて行こうとして起きた事故です。

 毎日、当たり前のように運転していると、運転者のスイッチが自動運転モードに入り、いつの間にか潜在意識にすり込まれたルートに進んでしまうことがあります。最悪の場合、違う道を進むうちに本来の目的をすっかり忘れてしまっても、私には不思議には思えません。

 幼児が助手席にいればまだよいのですが、チャイルドシートは必ず後部座席に設置するよう義務付けている州(全米各州のチャイルドシート使用義務)が多く、下車時に運転者の目に入りません。

 愛情の深さだけで、この種の事故は防止できませんから、皆さんも他人事にせずお気をつけください。奥様のご都合が悪くてご主人が代りにお子様を保育園に連れていく場合、ご主人が奥様に無事に届けた報告をするなり、バカがつくくらいの慎重なケアをしてあげてはいかがでしょう。