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2012年11月15日(第77号)


ハリケーン「サンディ」被害ニュース特集

 「100年に一度」か「温暖化で20年に一度」か?

 アメリカ生活を存分に楽しむなら、たまには現地マスコミの報道を通じて、ナマのアメリカの日常に触れてみませんか。このコーナーでは、毎月、現地マスコミの動画ニュースの中から皆さんのご興味をひきそうな話題を選んで、日本語解説付きでごらんいただきます。


 ハリケーン「サンディ」が10月29日に上陸し、185人の犠牲者と少なくとも5百億ドル(4兆円)の被害を残して去っていきました。「一生に一度」の大ハリケーンで、一部メディアは「パーフェクト・ストーム(2000年公開映画)」のあだ名で呼んでいました。

 オバマ大統領の陣頭指揮ぶりが最終盤の選挙戦で有利に働いたと言われていますが、NOAA(米国海洋大気局)の予想進路が見事に的中したのも幸いしたに違いありません。

 今回の巨大ハリケーンの襲来を地球温暖化と結びつけて考える人は多く、それまで旗幟(きし)を鮮明にしていなかったニューヨーク市長も、ハリケーンが去った後に、急遽、エコ推進派のオバマ支持を発表しました。

 一方のロムニー候補は、災害対策の要FEMA(連邦緊急事態管理局)を財政健全化のために廃止すると言った過去の発言を市民に揶揄されて冷や汗を流していました。


 「アメリカ生活・e-百科」にも、ニュージャージー在住の方々からいつもの倍に上るアクセスがありました。ハドソン川の西で大きな洪水が発生し、被災なさった方も多かったのではないかと心配です。被災時の心構えなど多少はお役に立ったでしょうか?

 ハリケーン「サンディ」は、地域ごとに多様な姿の災禍を残した点でも異様でした。今回は各地の動画ニュースを集め、皆さんに被害の全容に少しでも近づいていただきたいと思います。800マイル(1300q)離れて私たちが住んでいるケンタッキー州にも強風と強い寒気をもたらしました。

10月30日…マンハッタン大停電、地下鉄やトンネルも水没

11月1日…通勤に、発電用に、ガソリンを求めて長蛇の列

10月30日…洪水と火事に襲われた勇敢な消防士の町

10月30日…映画「戦艦バウンティ」で建造の帆船が遭難

10月30日…アパラチア山脈地方は強風と吹雪で停電

10月31日…エリー湖でも高潮、オハイオ 州は強風と洪水


10月30日…マンハッタン大停電、地下鉄やトンネルも水没

FDR Drive, Manhattan

 ハリケーンが去った翌日です。変電所が爆発し、マンハッタンに住む75万人の人々がロウソクの灯を頼りに暮らしています。交差点ではちぎれかかった信号機が大きく揺れて今にも落ちそう。摩天楼も真っ暗で、人々は非常階段を歩いて上るしかありません。他に移るよう宿泊客に頼む高級ホテルも現われています。

 ハリケーンは、ダウンタウンを川にしました。建設現場のクレーンはアメのようにひしゃげました。地下鉄やトンネルに水が怒涛のように流れ込み、道路は寸断されています。空港の滑走路も水浸しです。

Seaside Heights, New Jersey

 ニュージャージー州のリゾート地シーサイドハイツで移動するなら、今はカヌーが一番便利です。腰まで水に浸かる中でガソリンの臭いが漂い、町中に火災が起きかねない状況で人々は暮らしています。

 海岸には船が打ち上げられ、レポーターは東日本大震災を思い起こすと言っていますが、あながち不謹慎な発言と言い切れません。今回のハリケーンでは、満潮時の潮位1.5mと高潮2.7mを合わせ、4.2mの海面上昇があったと考えられています。


11月1日…通勤に、発電用に、ガソリンを求めて長蛇の列

A supermarket aisle with a large section empy save for scattered packages of bottled water

Montgomery, New York

 地下鉄が動かないので、マンハッタンに通勤する人々が、車でガソリンスタンドに列を作りました。バス乗り場も、もちろん長蛇の列です。

 別のスタンドでは、ポリ容器を持って自家発電機用のガソリンを買いに来た人たちが、寒空に並んでいます。ハリケーンの名残りで冷たい北風が吹きすさぶ中、停電で自宅の暖房が使えないのでしょう。

 長時間待った末に、売り切れでスゴスゴと帰る人も大勢います。ガソリンスタンドの店員によれば、次の入荷は10日先になるかもしれないとのことです。

 ニューヨーク市郊外の町では人々が日用品を買い占めスーパーの棚がガラガラです。


10月30日…洪水と火事に襲われた勇敢な消防士の町

 ブリージーポイントは、ニューヨーク市クイーンズのロッカウェー半島先端にある小さな町です。消防士が多いコミュニティで、同時多発テロでも29人の犠牲者を出しました。9月には竜巻が来て怖い思いをしたばかりです。

 しかし、ハリケーンが来て洪水が起きることはあっても、火災が発生するとは予想していませんでした。消防車は洪水の水位が低くなるまで近寄れず、111戸が全焼、20戸が半焼しました。運よく焼け残った家も、地下室は完全に水没してしまっていて損傷の程度も分かりません。

 これまでのハリケーンでは無事だったので、今回も避難せずに家に残っていた人たちが多数いました。ABCテレビは午後4時にブリージーポイントの取材を始めていたので、ハリケーン被災の様子が詳しくカメラに残されています。

 6時半には路上に水があふれ始め、6時55分に停電が起きました。そのうちに、近くで火の手が上がっているのに気がつきましたが、水の流れが速く逃げられません。10時にようやく水が引き始め、消防士も駆けつけてきました。


10月30日…映画「戦艦バウンティ」で建造の帆船が遭難

Bounty leaving Greenock, Scotland

Tall Ship Bounty

 1962年にマーロン・ブラント主演で「戦艦バウンティ(英語ではバウンティ号の反乱)」という映画(⇒予告編)が公開されましたが、その撮影のために、わざわざりっぱな帆船が建造されました。

 熱帯の楽園で乗組員たちが現地女性と恋に落ち、横暴な船長を追放するという実話に基づくアドベンチャーで、世界初のワイドスクリーンの映画としても知られています。

 今回のハリケーンでは、その帆船バウンティ号とふたりの人命が失われましたが、沿岸警備隊の決死の救助活動により14人が助かりました。

 風速50mph(22m/秒)の強風下、ヘリコプターを高度30フィート(9m)でホバリングして乗組員をひとりひとり吊り上げる離れ業でした。


10月30日…アパラチア山脈地方は強風と吹雪で停電

 ハリケーンの渦は台風と同じで反時計回りですから、ハリケーンの進路の西側で特に強い北風が吹き、アパラチア山脈にぶつかって、ウェストバージニア州やメリーランド州西部に豪雪をもたらしました。湿った重い雪で木々が倒れ、停電が多発しました。


10月31日…エリー湖でも高潮、オハイオ州は強風と洪水

 ハリケーンは、ペンシルバニア州の中央部で進路を北北東に変えましたが、進路の西のエリー湖も高波で大荒れになりました。オハイオは大統領選挙のカギを握る州ですから、クリーブランドで洪水が発生し、一時は投票率の低下が及ぼす選挙への影響が懸念されたほどです。