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2014年5月15日(第95号)


4大統領の肖像で有名なラシュモア山…スー族の聖地

 北部大平原と北部山岳部の観光・e-マップ @

 アメリカの白地図に、50州全ての名前を書き込める人は少ないかもしれませんね。かくいう私も、モンタナとワイオミングではどちらが北でどちらが南か、最近まで少し曖昧に記憶していました。でも、もう大丈夫です。昨年秋にインディアン戦争史の記事を連載し始めてから、全米の地理と歴史がすっきり分かるようになったのです。

 そこで、もうすぐ夏の観光シーズン。皆さんのバカンスの行先選びの参考にしていただこうと、アメリカ北部の大平原や山岳部の観光地図を作ってみました。イエローストーン国立公園や大統領4人の肖像が彫られたラシュモア山などが含まれる地域です。

 この地域は、19世紀に開拓者の人々がたどったルートを知るとよく分かります。1804年にルイス・クラーク探検隊はミズーリ川をボートでさかのぼり、インディアンの助けを借りてコロンビア川の支流を下り太平洋岸に出ました。帰りは二手に分かれ、クラーク隊はイエローストーン川を経由します。

 その後はオレゴントレイルが開かれ、西部開拓時代の幌馬車隊のメインルートになりました。現ネブラスカ州オマハからミズーリ川支流の北プラット川沿いに西上、ワイオミングのララミー砦の脇からロッキー山脈の盆地を抜けてスネーク川に至る道です。カリフォルニアトレイルは、グレートソルトレイクの北でオレゴントレイルから分岐します。

 オレゴントレイルとミズーリ川にはさまれた広い大平原は、平原インディアンの最後の楽園でした。ラコタ・スー族やシャイアン族は、ラシュモア山があるブラックヒルズ地方を守ろうとして戦いました。騎兵隊とインディアンの戦いの史跡も多い地域です。 


大平原と大草原


 ロッキー山脈の東は「グレートプレーンズ」と呼ばれる大平原で、即ちスー族ら平原インディアンの本拠地です。

 平原を表す言葉には別に「プレーリー」がありますが、「プレーリー」は草原地帯全域のことで、グレートプレーンズ」は乾燥地で丈の短い草しか生えない「ショートグラス・プレーリー」を指すと区別していいでしょう。

 標高1500フィート(457m)以上で年間降雨量20インチ(51p)以下が「グレートプレーンズ」の目安の条件。たまたまその境界付近を西経100度線が通っています…テキサス州北部のパンハンドル地方で東の州境を通過している緯度です。

Shortgrass Prairie

イエローストーン川流域の放牧(モンタナ州)

Tallgrass Prairie

ミシシッピー川沿いの黄土地帯(アイオワ州)

 「プレーリー」は、狭義で「トールグラス・プレーリー」として使われることもありますから、日本人的感覚的では「グレートプレーンズ」を大平原、「プレーリー」を大草原と呼んで区別すると、とても便利です。

 そこで、「大草原の小さな家(Little House on the Prairie)」の原作者ローラ・インガルズ一家が大草原で転々と引越した足跡を調べてみると、ウィスコンシン州−カンザス州−アイオワ州−ミネソタ州−サウスダコタ州−ミズーリ州の6州。全て西経100度線の東ですから、この定義は使えそうです。

 話は横道にそれました。「大草原の小さな家」はテレビで見たことも原作を読んだこともないので、ご紹介するのはまだ先になりますが、参考までに「大草原の小さな家・e-マップ」に、各地の関連博物館の情報を記載しておきました。

 博物館は各州に1ヶ所ずつしかありませんが、一家の転居先はもっともっと多かったようです。やっとの思いで移民してきても、最初の入植先でうまくいかず移住を重ねる人々も多かったようです。


スー族の聖地


かつてスー族がバッファローを狩り、遊牧していたブラックヒルズや周辺地域

 スー族から無理やり取り上げたブラックヒルズ一帯も、ゴールドラッシュの熱が冷めてからは再び寂しくなります。ラシュモア山の4人の大統領の肖像(彫刻中の動画)は、サウスダコタ州に観光客を呼び込むため1927〜41年まで14年の歳月をかけて彫られました。左から、ワシントン、ジェファーソン、セオドア・ルーズベルト、リンカーンの順です。

 インディアンも黙ってはいません。17マイル(27q)離れた岩山に、左の写真のモデル像のように騎乗のクレージーホースの全身像(彫刻中の動画)を彫ろうとします。制作は1948年に始まりました。完成すると、バーミヤンの石仏や自由の女神をはるかに超える高さ172m幅195mの大彫刻になるはずでしたが、顔以外の部分はなかなか出来上がりません。

 最高峰のハーニーピークもそうですが、ブラックヒルズの岩山は18億年前に噴出したマグマが残した花崗岩でできていて彫刻にはうってつけです。地質学者には面白い地域で、北西部のデビルズタワーは、5〜6千万年前のロッキー山脈造山活動時代に堆積岩の層をマグマが突き破りせり上がった奇観の岩山。ベアビュートやインヤンカラ山とともにインディアンの精霊信仰の聖地としてあがめられていました。

 ブラックヒルズの南部は古生代に形成された石灰岩地帯で、これまでに大小200の鍾乳洞が見つかっています。ジュウェルケーブ国定公園は、ケンタッキーのマンモスケーブ等に次ぐ長さで世界3位の鍾乳洞。隣のウィンドケーブの方は少し短いのに、なぜ格上の国立公園に指定されたかというと、方解石の薄い層でできるボックスワークという世界的にも珍しい構造があるからです。カスター州立公園もそうですが、鍾乳洞の上の平原は一度は滅びかけたバッファローや野生動物の楽園になっています。

 ブラックヒルズの東にはバッドランズ国立公園があります。バッドランドとは、語感の通り、激しい浸食で表土を失なった不毛の土地を指して言いますが、この付近ではトードストゥール地質公園()も有名、ほかにノースダコタのセオドア・ルーズベルト国立公園やモンタナのマコシカ州立公園、ワイオミングのヘルズ・ハーフエーカー()もバッドランドです。