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2015年4月15日(第106号)

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1200年来の干ばつでカリフォルニア州の市町村に25%節水令

  「世界のサラダボウル」セントラルバレーの農家も苦境

 カリフォルニア州では、史上最悪の干ばつが起きています。それどころか過去1200年で最悪となるかもしれないことが、木の年輪や土壌の分析により判明しました。

 4月1日はエープリルフールにもかかわらず、ブラウン知事は、全市町村に対して緊急で25%の節水を指示しました。昨年の7月末に9ヶ月の期限付き節水令が出されていましたが十分な効果があがらず、より規制を強化したのです。


芝生から砂利の庭に


 日本の水不足といえば水道の計画断水ですが、アメリカの場合は余裕があるというか、芝生の散水を停止するのが最大の課題です。今回のような長期の節水を続ければ芝生は枯れてしまいますから、州立の公共機関は、州民に率先して芝生の庭を砂利に敷き換える工事をしています。


 今回の規制はカリフォルニアの水需要の80%に及ぶ農業用水には適用されません。そこで、州知事は票田の農民層に甘すぎると、一部のマスコミに批判されています(数字については、異論もあります)。中でも目の敵にされているのが、アーモンド農家。先日まで、灌漑により世界生産の75~80%をまかなうまでに育った優等生でしたが、今や州の水の3.4%を使う厄介者です。

 しかし、カリフォルニアの農業は既に150億ドルの干ばつ被害を受けていて、休作地は40万エーカー(1600平方km)、解雇された農業労務者も1万7千人に達したそうです。規制強化どころか、生き残るために井戸を乱掘して危機を何とかしのいでいますが、そもそもセントラルカリフォルニアの地下水は太古の化石水で、ひとたび枯渇したらそれっきり。地下水の水位は急速に下がっている上に、近年は、シェールオイルの開発で、岩盤の掘削に使った水が地下水を汚染しているという情報もあり、次々に心配が尽きません。

 カリフォルニア州外の住民としては、ビバリーヒルズの豪邸のプールが干上がろうとかまいませんが、「世界のサラダボウル」として知られるセントラルバレーの果物や野菜の生産が、立ち行かなくなっては一大事。たちまち世界中がパニックです。


シエラネバダ山脈の少雪


 水源の山々は2年連続の少雪で、麓で井戸に頼っていた村落では、地下水の水位が下がり給水に頼っているほどです。シエラネバダ山脈では、1977年と昨年に記録した平年比25%の残雪レベルを更新し、今年は雪が平年比6%の深さしか残っていません。

 少雪の原因は冬のジェット気流の蛇行ですが、そのまた原因が地球温暖化であれば、これからも危機的な干ばつが繰り返し、最悪は、とんでもない近未来が到来するのかもしれません。

アメリカ西部の干ばつ状況推移

2011年4月5日

2012年4月3日 2013年4月2日 2014年4月1日 2015年4月5日
D0 Abnormally Dry (異常乾燥) 干ばつが始まるおそれ…作物の成長鈍化、山火事のリスク増大
D1 Moderate Drought (干ばつ) 一部の作物に被害、山火事のリスクが高く、水源のレベルが低下
D2 Severe Drought (ひどい干ばつ) 多くの作物に被害、山火事のリスクが非常に高く、水不足が拡がる
D3 Extreme Drought (極めてひどい干ばつ) 普遍的に作物に大被害、山火事のリスクが極めて高く、節水規制が必要
D4 Exceptional Drought (滅多にない干ばつ) 全域で滅多にない作物の被害と山火事のリスク、水不足は非常事態

セントラルバレーとロサンゼルスの水争い


各地の降雨量多雨少雨 (⇒拡大)

各地の人口密度密集過疎 (⇒拡大)

 カリフォルニアの降雨は山岳地帯に多く、人口は猫のひたいのような海岸沿いの大都市とセントラルバレーの農業地帯に集中しています。

 歴史的にも、人口は19世紀半ばから急増し、水資源の確保はいたちごっこの連続でした。州内には、大規模な用水路や運河が縦横無尽に張り巡らされています。

 特に問題となるのは、近隣に水源のない人口1850万人のロサンザルス大都市圏と人口3百万人のサンディエゴ大都市圏です。

2nd Los Angeles Aqueduct

 下の図をごらんください。ロサンゼルス向けの最初の送水路は、1913年にできました。それまではシエラネバダ山脈東の谷間を流れ内陸湖に注いでいたオーウェンズ川が水源ですが、ロサンゼルスの水需要は旺盛で、昔は琵琶湖の2/5の広さがあった湖は干上がり谷間の農業も壊滅してしまいました。

Parker Dam (Colorado River Aqueduct)

 次にロサンゼルスが目をつけたのは、グランドキャニオンの谷間を流れ、ラスベガス付近から南下してカリフォルニア湾に注ぐコロラド川の水でした。送水路の本線は1939年に完成し、1947年にできた支線はサンディエゴ方面に水を供給しています。

カリフォルニア州の送水路(Aqueduct/Canal) (⇒拡大)

Sacramento-San Joaquin River Delta

 それでも水は足りません。そこで、最後の切り札とされたのが、サンフランシスコ湾東方の湿地帯サクラメント川・サンホアキン川デルタでした。広さは琵琶湖の4倍。北のサクラメント川と南のサンホアキン川の合流点で、ここは、山々からセントラルバレーに下る流れが最終的に集積する天然の貯水池です。

California Aqueduct (右)

 1973年にロサンゼルスとサンディエゴに至るルートが完成しました。全長は1129km…東京から札幌までの道のりに相当する送水路です。

 そんなわけで、南カリフォルニアの住民は、水を分けてもらっている北部や中部には頭が上がらないはずですが、数字上で、昨年7月からの節水令に、最も不真面目に対応してきたのがロサンゼルスやサンディエゴでした。もともと乾燥地域ですから、散水しなければまたたく間に芝生が駄目になってしまうのでしょう。水さえあれば、干ばつの時ほど頻繁に散水しなければいけないのですから…。

 具体的な節水方法は、市町村が決めて州に報告する仕組みです。カリフォルニアにお住まいの皆さんは、市町村のホームページや州の特設ページをチェックして、節水令をしっかり守り、罰金を取られないようお気をつけください。