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インターステート高速道路

★軍事兼用道路 ★自動車産業と道路網 ★I-75とキングスハイウェー ★I-64 ★I-65 ★I-69 ★I-65 ★I-73/74


軍事兼用道路


 インターステート・ハイウェイの公式名称は「インターステート&ディフェンス・ハイウェー」です。1956年に、時のアイゼンハワー大統領が、ナチス・ドイツの遺産アウトバーンに学び軍事利用も想定して企画した道路建設。したがって、道路標識も盾のマークで、緊急時には飛行機が着陸することを想定して作られたと広く世間に信じられています。

 片道3レーンが標準仕様というぜいたくな高速道路で、2010年現在の総延長は47,182 マイル(75,932 km)。地球1周が4万キロですから、もう少しで2周になります。

 それに対して、1926年にスタートしたUSXXという番号の付いた「US Highways」は、州を越えて全米を結ぶ点は共通ですが、実は州や市町村の管理する道路です。


自動車産業と道路網


 米国中西部から南部に進出する日系自動車産業の立地は、インターステートなしには考えられません。グリーンの線で表わした3本のインターステート周辺に、自動車関連企業の多くが集まっています(赤い細線はインターステートとインターステートに準ずる高速道路網を表わしています)。

 周辺で進んでいる3本のインターステート延長計画(図の青い線)についても調べました。運転が苦手であまり地図を見る機会のない奥様も、この際、インターステート沿線の地理を勉強してみませんか?


インターステート75号線とキングスハイウェー(カナダ) 401号線


  南にどんどん行くと、ディズニー・ワールドのあるオーランド付近からマイアミ方面に至ります。北向きにどんどん行けばカナダのトロントを経てモントリオールやケベックに至るいわゆるメープル街道です。

 ケンタッキー州レキシントンの隣町ジョージタウンと、トロントから車で2時間西のケンブリッジで、トヨタ工場が相次いで生産を開始したのは1988年のことです。(少しさかのぼって79年の第2次石油ショックを機に)北米では日本車の売上が伸び、自動車摩擦は80年代に日米間の政治問題になっていました。82年にはオハイオでホンダ、83年にはニッサンがテネシーで生産を開始しましたが、トヨタは84年にGMと合弁のNUUMI(サンフランシスコ近郊のフリーモント)を稼動させてからも単独進出にはじっくり4年の歳月をかけ、日米両政府をやきもきさせていたものです。

 シンシナティ-ノーザン・ケンタッキー国際空港の側には北米の生産を統括管理するTEMAの本部があり、技術開発部門は「自動車の都」デトロイトにあります。カナダでは、ケンブリッジ工場からあまり遠くないウッドストックに北米第7工場が作られました。


インターステート64号線


 西の起点セント・ルイスで空高く逆放物線を描く「ゲートウェイ・アーチ」は、1804年にジェファーソン大統領が太平洋への道を探すべくルイス&クラーク探検隊を派遣した偉業を記念するモニュメントです。乗物で最上部の展望台まで行けるようになっています。東の端は、海軍基地で有名なノーフォークです。I-75がトヨタの南北の幹線ならI-64は同じく東西の幹線です。東のウェスト・バージニアにはエンジン工場、西のエバンスビル近郊にはインディアナ工場、セント・ルイスにもアルミ部品製造の子会社があります。


インターステート65号線


 ルイビルを通ってI-75と並行して南北に走る幹線です。北のインディアナ州は、「インディ500」の本場だけあって自動車産業も集積しています。インディアナポリス北方ラファイエットのスバル(富士重工)工場では、提携により一部トヨタ車も生産されているそうです。

 進路を南に取ると、テネシー州ナッシュビル近郊は北米ニッサンの本拠地です。以前はカントリー&ウェスタンを聞かせるオプリー・ランドというテーマ・パークがあったのですが、いつの間にかアウトレット・モールに変身、隣接のホテルと観光船だけが当時の風情を残しています。

 もう一つ南のアラバマ州では、ハンツビルにトヨタ(エンジン工場)、バーミンガムにホンダが進出しています。アラバマ州といっても馴染みが薄いかもしれませんが、映画「フォレスト・ガンプ」で主人公がエビ漁をしていたのがI-65の南端同州モービルの近郊です。南下するに従い、シーフードがおいしくなっていくのが分かります。


インターステート69号線と計画路線


 現在のI-69はヒューロン湖のほとりポート・ヒューロンからインディアナポリスを結ぶ短い路線ですが、計画では、西海岸に沿って縦貫するI-5以来初のカナダ国境とメキシコ国境を1本で結ぶスーパー・インターステートになる筈です。メキシコの工業都市モンテレーに通じる路線は3案あるそうですが、インディアナポリスからエバンズビル、メンフィスを通ってヒューストンまではほぼ確定してきました。ただし、インディアナでは豊かな自然林の真っ只中を通すことになるので反対運動もまだまだ根強いということです。

 私たちが住むケンタッキー州レキシントンとヒューストンは直線距離で約9百マイルで、マイアミまでの距離と変わりません。テキサスとインディアナやケンタッキーが対角線で結ばれたら、元気があれば朝早く車で出てその日のうちに到着というのも不可能なことではありません。トヨタの北米第6工場があるサンアントニオは、メキシコからの独立戦争で義勇軍が立てこもったアラモの砦で有名ですが、市内に運河が巡らされていて夏にも涼のあるエキゾチックな街です。

 途中、ミシシッピー川中流のテネシー州メンフィスは、小泉首相も訪れたエルビス・プレスリーの生誕地です。ナイル川の都市にちなんで命名しただけあって、エジプトのピラミッドを模した2万人収容のスポーツ・アリーナもあります。対岸のアーカンソーには日野自動車があります。日本では知名度の低い州ですが、クリントン大統領やマッカーサー将軍が生まれた州です。


インターステート66号線と計画路線


 もともとは首都ワシントンDCとカルフォルニア州サンディエゴを結ぶ大陸横断の大構想でしたが、太平洋側=カンサス牛で有名なウィチタより西の半分は交通量も少なく環境問題もあるとのことであえなくキャンセルされてしまいました。そればかりか、これまで開通したのは東端のたった78マイルという寂しいインターステートでしたが、ようやくケンタッキー州で大筋が決まり計画が徐々に進んできました。イースタン・ケンタッキー南東端パイクビルから、既存のパークウェイ伝いにI-65のボーリング・グリーンを経由ケンタッキー最西端のパドゥーカに至る路線になるようです。

 パドゥーカに近いテネシー州境には巨大な湖が2つ並んでいます。ルーズベルト大統領のニューディール政策「テネシー川開発計画(TVA)」でできたダム湖です。西側のケンタッキー・レークひとつでも、琵琶湖に匹敵する広さがあります。

 ミズーリ州に入るルートはまだ決まっていませんが、ミシシッピー川を渡る橋の候補地付近はオハイオ川とミズーリ川が合流する大湿地帯で、まるで河口の三角州のようです。観光スポットとして注目されてはいませんが、日本人ならスケールの大きさにきっと感動するでしょう。現に、合流地に近いイリノイ州の町の名前がカイロ(ケイロ)、カイロがメンフィスの上流にあるのも妙ですが…。


インターステート73/74号線と計画路線


 I-73/74は将来ホンダ幹線になるかもしれません。現在のI-74はアイオワ州ダベンポートからインディアナポリスを経てシンシナティに至る短い路線ですが、いずれアパラチア山脈を超えてI-73に接続、「ゴルフ場天国」のサウス・キャロライナ州マートルビーチ付近へと延伸する予定です。

 ホンダは、1979年にコロンバス近郊のメアリーズビルで2輪車の製造を始めて以来、特にオハイオ州内に重点投資して伸びてきましたから、関係企業もオハイオ州周辺に広く進出しています。最新工場はI-74沿いのインディアナ州グリーンズバーグにできました。マートルビーチに近いティモンズビルでオフロード・バギー車を生産しています。

 シンシナティからウェスト・バージニアへの路線は3案あるそうです。オハイオ州はオハイオ川北岸のポーツマスを経てウェスト・バージニアのハンチントンに抜ける2案、ケンタッキー州はノーザン・ケンタッキー経由南岸を進みアッシュランドでI-64に接続する案をを押しているのだそうです。