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落雷と避難法

アメリカでは年に60人死亡 ★車や家の中は安全ですが… ★黒雲を見たら迷わず避難!!

樹木からは4m離れましょう 被雷防御システム 逃げ遅れたら…


世界各地の年間落雷件数(/平方キロ)⇒拡大

 ゴルファーの皆さん…プレーの最中に、雷に遭って怖い思いをなさったことはありませんか?アメリカの南部と中西部は、世界各地と比べてみてもかなり落雷が多い地域です。今年もアウトドアの季節がやってきますが、命を粗末にしないよう常に万全のカミナリ対策を心がけてください。


アメリカでは年に60人死亡


 日本で落雷による死亡者といえば毎年3人程度ですが、アメリカでは平均62人が亡くなっているそうです。もちろん、負傷者の数も数百人に上ります。2007年に亡くなった45人を分類すると次のようになります。

場所 性別・年齢 環境

雷警報機(Strike Alert)

 グラフからお分かりのように、死亡事故は圧倒的に戸外で起こります。樹木の下や水辺などのように、特に危険な場所は数々ありますが、戸外で絶対に安全な環境は、金属製屋根の自動車の内部以外にないと思った方がよさそうです。

 雷警報機の販売代理店あおば屋さんのホームページを参考にして、場所や環境により落雷の危険度を4段階に分ける表を以下に作ってみました。NOAA(全米海洋気象局)やNLSI(全米落雷安全協会)は機械的な分類をわざと避けているようです。「比較的安全」とか「危険少なめ」と書いても、人は「絶対安全」と思い間違いをしてしまうことがあるからでしょう。

 とはいえ、安全な場所へ避難する余裕がないときは、最寄りで安全度の高い場所を探すしかありません。戸外の実際の環境は、水辺の木陰だとか林間の窪地だとか条件が複雑ですから、咄嗟に応用問題を解くことができるよう基本原則をよく理解しておくことが重要です。

安全な場所 危険が少ない場所 危険な場所 特に危険な場所
建物や家の中、屋根が金属の自動車の中、避雷針がある施設 高さ5〜30mの樹木に近過ぎず遠過ぎずの距離、橋の下や乾いた窪地や溝 林の中、湿った窪地や溝、避雷針のない小屋 樹木の下、水辺、周囲に何もない場所、テントや雨宿りの場所、自転車

車や家の中は安全ですが


Power Surge Outlet

 鉄筋コンクリートの建物や木造の十分大きな家、避雷針がある施設、屋根が金属で覆われた自動車などの内部は安全です。網が貼ってあっても、ポーチなどは安心できません。

 (中学の理科で習った気もしますが)自動車の場合は車体が金属ですから、カミナリの電流が車体の表面をすり抜けて、車内には入ってこないと覚えておきましょう。ですから、窓を閉め、車体やハンドルからは、できるだけ手を離していることが重要です。ただし、自動車が被雷したら轟音で耳を傷めるリスクがあります。手で耳を覆い、座席でじっとしていれば理想的です。

 家の中といえども、侵入雷(二次放電)のリスクがあります。@柱、壁、天井、A電気や電話線および配線でつながっている電気器具や電話、B水道管や蛇口、ガス管やガス栓からは1メートル、屋外アンテナにつながっているテレビなどからは2メートル離れた方がよいでしょう。

 屋内での被害は、せいぜい身体がしびれるくらいで済むかもしれませんが、ひどい雷雨の最中には、炊事、洗濯、入浴を避けるのが賢明な判断です。

 人的被害がなくても、コンピューターやAV機器がやられてしまうことはあります。スーパーや家電店に行けば過剰電流を防ぐコンセント(Power Surge Outlet)付き電源コードがありますが、無条件に信頼するのは危険です。

 比較して、なるべく性能のいいコンセントを買うこと、心配なら電源を抜くようにすることが大事です。物的損害は、火災保険やテナント保険で一部は回収することもできますが、皆さんの大事な文書を記録したメモリーが丸ごと消えてしまったら、それだけは取り返しがつきません。


黒雲を見たら迷わず避難!!


黒雲を見たら迷わず避難!!

 さて、これは私たちの体験談。2007年はカミナリが多い夏でした。その日も「ところにより雷雨」の天気予報でしたが、取敢えず絶好のゴルフ日和で、夫婦で近所のパブリックコースに出かけました。後半の9ホールに差しかかる頃に空はうす曇に変わってきていましたが、風もなく気持ちよくゴルフを続けました。

 3つ進んで12番ホールのことです。パットが決まって一安心、フッと南西の空を見上げると、これまでに見たことがないほどどす黒い雲が目に入りました。「逃げよう!!」…咄嗟に決めてカートに飛び乗り、逃げ出しました。11番のフェアウェーを横切ったところで最初の稲妻が走り、突風が吹き荒れ始めます。風はアゲインストで、坂は上り。カートは息絶え絶えで、今にも止まりそうです。プロショップに後100メートルの所で、ついに土砂降りにつかまりました。

 今思うと、あれはデレーチョという特別スピードの速い雷雨だったのでしょう。私たちの後ろでプレーしていた若者は逃げ遅れ、倒木で下敷きになるところだったと言っていました。

私たちの避難実体験 (避難コース) 

 緊急避難にコツがあるとしたら、まず第一に、天気予報を事前に確認しておくこと…お出かけ前に、ドップラー・レーダー画面で最新の雲の動きを見ておきましょう。雷雨(Thunderstorm)や竜巻(Tornado)の注意報(Watch)や警報(Warning)が出ていたら、アウトドアのイベントは思い切って中止するべきです。

 次に、あらかじめ自分の場所と最寄りの避難場所の位置関係を頭に入れておきましょう。ゴルフの場合、知らないコースならプロショップの人に遠慮なく聞いておくのが一番です。いいコースでは、トイレや休憩所に避雷針設備がついていることもあります。最短距離で避難場所に向かうためには(プレー中の人に合図した上で)フェアウェーを横切っても差し支えありません。歩くのが好きな方も、カミナリが発生しやすい季節だけは、素早く避難できるカートに乗ってプレーなさってはいかがでしょう。

 集団イベントの場合、緊急時の対応をリーダーが事前によく説明しておく必要があります。ゴルフ・コンペのように参加者が広く分散してしまう場合は特に要注意。ゴルフ場の警報を当てにしていると、サイレンが鳴るのが遅れることもありますから、対応は個人個人の判断に任せなければなりません。各パーティーで最も良識のある人をエチケット・リーダーに選び、早めに避難するようお願いしておけばまず安心。その上で、携帯で連絡を取り合って全パーティーの無事を確認しましょう。イベントの再開は、最後の雷鳴を聞いた後30分経ってからならば安全と言われています。


樹木からは4m離れましょう


風説は信用できるか?

 昔から、木のそばは危ないとか安全だとか、正反対の風説が飛び交ってきましたが、単純化して言えば、高い木は避雷針の代わりをして直撃雷から身を守ってくれるが、木に近付きすぎると側撃雷(二次放電)を受ける可能性が高くなるという話です。図で使用した直撃雷を防ぐのに必要な木の高さとカバーする角度、側撃雷を防ぐ距離も一つの目処に過ぎません。雷鳴が轟く中で木陰に入りたくなるのは人情で、実際に「危険が少なめ」な場所に留まってカミナリが通り過ぎるのを待てるかというと、私には自信がありません。

 USGA(全米ゴルフ協会)はプレー中にカミナリに遭ったら木が密集した林に逃げ込むよう指導しています(⇒ポスター)が、運悪く近くの木に落雷した場合に側撃の危険を回避することができません。あおば屋さんの記事には、むしろ木がまばらな林の方が危険は少ないと書かれていますが、これは皆さんの総合判断。背の高い木のそばを避けたり、4mは無理でも即死は免れる2mの距離は保つなど、少しでも安全な条件を考えてください。


被雷防御システム


フランクリンの実験

 避雷針(Lightning Rod)はアメリカ建国の父の一人で物理学者のベンジャミン・フランクリンが発明しました。嵐の日にタコを揚げて被雷させる実験をしたという逸話は有名ですね。

 私たちがよくプレーするゴルフ場にはあずまや風のトイレがあって避難所になっているのですが、避雷針がたった45度の範囲しかカバーしていないのなら安全性は十分なのか少し心配でした。そこで、今回あらためて調べてみると、被雷防御システム(Lightnig Protection System)というのがあって屋根の中に金属の導線が張り巡らされているようです。検査証明のプレートが貼ってありますから大丈夫なのでしょうが、臆病な私はそれでも不安…なるべくお世話になりたくないものです。


逃げ遅れたら


 乾いた窪地や溝は比較的安全ですが、少し湿っていても周囲の環境よりは安全です。

 谷よりは丘の上など開けた高い場所の方が危険です。テントは、何もない場合よりも危険ですから、野営地を決める段階で、カミナリに比較的安全な場所を選ばなければなりません。(避雷針のない)山小屋やあずまやは、何もない場合よりは安全ですが、できるだけ柱や壁から離れましょう。

 木は高さが5メートル以下では役に立ちません。近くにいると、かえって側撃のリスクが増すばかりです。逆に、高さが30メートルを越えると、遮蔽角45度の範囲でも遠くまでカバーすることはできませんから気をつけてください。せいぜい30メートルの距離が限界です。水上は極めて危険ですが、高い木がある岸辺に上陸すれば、さらに危険なこともあります。

 危険な場所でカミナリにつかまってしまったら、腰をかがめた低い姿勢で、できる限り、少しでも安全な場所に移動しましょう。両足を閉じてしゃがみ耳をふさぎます。開脚したり腹ばいになった場合は、周囲に落雷した電流を拾って感電するリスクがあります。同伴者がいる場合には、お互いに最低5メートル離れてください。

 最近は、身に付けた金属類を外すのは意味がないという説が大勢ですが、傘やゴルフ・クラブ、釣竿など長い持ち物は十分離れた場所に寝かしておきましょう。

 同伴者が被雷したら、感電することはありませんから、すぐに脈拍と呼吸を確認します。心肺停止の場合には、蘇生法を試みながら救助者を待つ必要があります。最近は、人工呼吸なしに心臓マッサージを続ける方が効果的という調査結果もあります。心臓マッサージは、相手の胸の真ん中に両手を重ね、体重をかけ手のひらの付け根で4 〜 5cm沈むよう圧迫します。テンポは1分間に100回のペース…あばら骨が何本か折れてもやむを得ないないそうです。