ボールサイズの雹(ひょう)★雹(ひょう)と霰(あられ) ★ヘイルのサイズ ★自動車保険 ★雹が降れば屋根屋が儲かる ★火災保険 雹(ひょう)と霰(あられ)
日本の天気予報では、雹(ひょう)と霰(あられ)が、直径5mmを境にサイズで区分されています。積乱雲を伴い、主に夏に降る氷の塊。英語でも霰(あられ)に相当する言葉はありますが、普通は区別なく一括してヘイル(Hail)と呼ばれています。それだけ大きなヘイルが多いということでしょう。 冬の霰(あられ)は、日本では雪あられと呼ばれ、雪の仲間に分類されています。「雪あられ」については「フリージングレイン」の記事で詳しく説明しますが、ソフトヘイル(Soft Hail)の通称どおり柔らかく、これが積もればアメリカの天気予報でスリート(Sleet)です。 雹は、積乱雲の中で、雪の結晶が表面が融かしながら落下し、再び上昇気流に吹き上げられて上空で凍るサイクルを繰り返すうち巨大な氷の塊に成長するそうです。大きな積乱雲は竜巻を伴いますから、大きな雹が降るときには、竜巻の心配もしなければなりません。 ヘイルのサイズ
竜巻を伴わなくても、大きな雹が身体に当たれば、それだけで危険です。気象警報でコインサイズと言っているうちはまだ安心…約直径2cmですから車を傷めないようガレージにしまいましょう。 ○○ボールサイズとなれば正に緊急事態…直ちに丈夫な屋根がある建物の中に避難して、大ケガをしないようお気をつけください。天気予報は、誰にでも分かりやすくなければいけません。雹の大きさを表す用語も、身の回りのコインやボールを例えに使うことに決まっています。 それも、報道関係者が誇張して伝えないように用語ごとに雹の直径が客観的に定められています。ボール・サイズの雹など滅多にあるはずがないとお思いの方は右の動画をごらんください。 アメリカでは、2010年にサウスダコタ州で降った直径8インチの雹が観測史上最大とされています。日本では、大正6年(1917年)に直径30cmで重さ3.4kgのカボチャ大の雹が降った記録があるそうです。 自動車保険
ベースボール・サイズの雹が降ると、強度不十分なガレージの屋根などは突き破られてしまうことがあります。これでは、せっかくガレージに避難させた車もボコボコです。ソフトボール・サイズの雹では死者も出ます。 自動車が雹にやられた場合、自損特約を付していれば(免責額を除き)修理代は保険でカバーできますが、凹みを直した傷跡はよく見れば分かるので、中古で下取りに出すときの価格も低く見積もられてしまいます。 テキサス州サンマルコスは、トヨタ工場があるサンアントニオの北東で大アウトレットモールがあることで有名な都市ですが、2006年4月にはモールや近所のディーラーに露天駐車していた車が雹に直撃されてしまったから、さあったいへん…自動車保険の求償請求が1万件に上ったといわれています。 車をぶつけて保険会社に修理代を請求すると翌年度から保険料が上がってしまいますが、雹は天災ですから、保険求償しても皆さんの個別の保険料に影響することはありません。ただし、地域全体の保険料の基準が見直され、翌年度から保険料が上がるのは避けられないことのようです。 雹のサイズや被害状況が記録的な雹災害を抜き出して表にしてみましたが、これは氷山の一角です。皆さんがお住まいの地域にも、巨大な雹が降るおそれが高いことをご認識ください。 2000年以降にアメリカで起きた記録的な雹災害
雹が降れば屋根屋が儲かる
2007年6月には、私たちが住むレキシントンにゴルフ・ボール大=直径4cmの雹が降りました。左の写真のように、お隣の庭の木がポッキリ折れて我が家の庭に倒れ込んだのですから、すさまじい威力です。 しばらくして、隣近所の前庭に屋根屋さん(Roofer)の看板が立ち始めました。毎日のように、雹被害の無料見積りを勧める手紙が届きます…「ホームオーナーズ保険(火災保険)で無料修理!! 」。こんなに多くの屋根屋さんが、いったいレキシントンのどこに隠れていたのでしょう? 私たちの家の屋根は大丈夫そうに見えたのですが、遠慮がちに保険代理店に相談してみると「下から見ても、損傷はよく分からない」と地元の屋根屋さんを紹介してくれました。 電話すると、早速、スコットというセールスマンがやってきました。私自身も屋根の様子を見ろと勧められて、こわごわハシゴを上ってみると、確かに屋根材の表面の粒子は削れて樋に溜まっているわ、換気口のカバーはボコボコになっているわで、「素人目にも要修理」…納得しました。 スコットと世間話をしている間に、業界のカラクリが分かってきました。スコットのような屋根屋さんは「雹の追っかけ(Hail Chaser)」と呼ばれ、全米どこでも雹が降ったと聞けば飛んでいくのだそうです。ふだんは、「雹の首都」と異名で呼ばれるセントルイスに住んでいますが、各地に仲間がいて今回はレキシントンの屋根屋さん宅に皆が寝泊りしているとのこと。 今、レキシントンで仕事をしているのは70業者=200人ですが、その中で、本当の地元業者は10社程度、大半はアルバイトを使っているので注意した方が良いと、具体的に教えてくれました。「風が吹けば桶屋が儲かる」はただのことわざですが、「雹(ひょう)が降ると屋根屋が儲かる」のは実話です。 火災保険(ホームオーナーズ保険)続いて、保険会社の社員で補償額を査定する係の人(アジャスター)がやってきて、被害状況を調べていきました。翌日には、樋やポーチの防虫網の被害まで含めて約8千ドルという査定が来ましたが、スコットはまだ3千ドルほど少ないと言って、私たちの代りに保険会社と交渉してくれました。 保険契約には免責額(Deductible)の規定があって、その金額までは自己負担しなければなりません。私たちの契約は$500ですが、お向かいのご夫婦は、保険料を安く済ませるために免責額を先日$1000に引き上げたばかりで、ちょっと残念がっていました。 お隣は、今年に入って屋根を葺き替えたばかり…こんなことなら、もう少し待てばよかった...。私たちは、遅かれ早かれ修理しなければならなかった箇所を保険金で直せそうなので、ラッキー。 雹の被害も、家庭によって悲喜こもごも。いずれにしても、雹の被害があるたびに、その地域の自動車保険やホームオーナー保険の保険料が上がってしまうのだそうです。 |