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2007年サブプライム危機

★個人の信用履歴 ★サブプライム・ローンの融資条件


 この記事を「e-ニュース」に書いたのは2007年の9月…当時はまだ「サブプライム・ローン」って何?と、日本人の皆さんはのんびり構えていましたが、その後、世界経済は大不況に陥ってしまいました。

 「リーマン・ショック」という言葉が有名になってからは、逆に、忘れてしまって覚えておられないかもしれませんが、「サブプライム・ローン」は世界同時不況のきっかけとなったアメリカの低所得者向け住宅ローンです。


個人の信用履歴


 プライムといえば「一級品」のこと、サブ(スタンダード)といえば「(標準)以下」のこと、サブプライムといえば「二級品」のこと。「サブプライム住宅ローン」とは、低所得者や延滞履歴などがあって信用度の低い人たちへの融資ということです。

 アメリカには、個人信用の格付け会社が複数ありますが、FICOという会社のクレジット・スコアが最も広く使われているようです。最高が850点で最低が300点。ローンやクレジットカードの利用実績をチェックして、@返済遅延の有無A借り入れ限度の余裕B信用履歴の長さ(期間)Cローンの種類(条件)D最新の借入状況の5要素を総合評価します。

 FICOの点数でサブプライムの債務者とみなされるのは普通620点未満の人々で、低所得者と合わせると、全米人口の約25%にもなるそうです。ところが、サブプライム住宅ローンは、2004年以降、全住宅ローンの20%にものぼったというのですから、金融機関は誰彼かまわず喜んで貸したと見ていいでしょう。


サブプライム・ローンの融資条件


 サブプライムの債務者は、言い換えれば、返済能力が非常に低い人たちです。

 月々多額の返済をすることができませんから、支払いを楽にするよう数々の工夫がされています。一番ポピュラーなのは「アイ/オー」=イントレスト・オンリー住宅ローンで、利息だけ払えば元本の返済はしばらく要らないことになっています。

 それどころかピック・ア・ペイメント住宅ローンというのもあって、アメリカのクレジット・カードのように、月々の最低支払額以上なら返済額はいくらでもいいというのもありました。返済が月々の利息以下なら、借金が逆に増えていくという背筋が凍るようなローンです。

 原則として30年ローンですが、3年もすると返済負担軽減期間が終わり、高金利で元利を合わせて返済しなければならなくなります。

 当初3年固定金利→その後27年変動金利の典型的サブプライム住宅ローンの例を見てみましょう。25万ドル借りた場合の利息は最初の3年間$1,200/月が4年目には$2,235/月になります(ちなみに元金は均等返済なら$700/月)。

 融資時には割高な手数料を請求され、延滞したら多額の遅延損害金を払わなければなりませんから、返済能力が非常に低いサブプライムの債務者に返済が続けられるわけがありません。


アメリカの住宅バブル


 アメリカでも、住宅ローンを貸すのはたいてい銀行などの金融機関ですが、大部分は「証券化」して転売してしまいます。野球選手やフットボール選手の成績でも何でも、とかく数字で表わすのが好きなお国柄ですから、サブプライム住宅ローンの安全性(延滞確率)も数値化します。

 1件ごとのリスクは高くても、たくさんかき集めればリスクは分散される「みんなで渡れば怖くない理論」などでもっともらしく説明したので、アメリカだけでなく各国の投資家が購入しました。

 アメリカの住宅バブルは上図のように大都市や観光リゾートのある州で顕著でしたが、2005年8月がピークで、2006年からは住宅価格の下落と差し押さえの増加が目立つようになって来ました。

 多額の借金を抱えているのは低所得者だけではありませんから、日本のように住宅バブルが崩壊したら、さらにたいへんな事態になります。

 住宅ローンの返済が進んでくると、家を担保に比較的低金利で使途自由の「ホーム・エクイティ・ローン」を借りることができます。住宅バブルの崩壊前は、年々家の評価額が上がるので融資枠もどんどん増え、平均的なアメリカ人が借金で消費を伸ばし、景気を支えてきたのです。