ミュージックシティの音楽産業

★ザ・ディストリクト ★ミュージック・ロウ ★ミュージック・バレー ★州議事堂と200周年記念公園


I-65 シカゴ〜インディアナポリス〜アラバマ州モービル 

I-40 ノースカロライナ州ウィルミントン〜ロサンゼルス付近

I-24 イリノイ州南部のマリオン〜テネシー州チャタヌガ

 ナッシュビルは三つのインターステートが交差して外来者には少し分かりにくい街ですから、左の地図では高速道路を色分けしてみました。ミュージックシティの愛称で知られるナッシュビルには、音楽産業の拠点が3つあります。

========・ディストリクト========

Tootsie's Orchid Rounge

 一つめはダウンタウンの真ん中「ザ・ディストリクト」で、ここにカントリーその他のライブハウスが集中しています。さらに三つに細分化すると、まずは 20世紀初頭に新聞や出版社が栄え、ナッシュビルに音楽産業が育つ基礎を作ったプリンターズ・アレイ(印刷屋小路)…ナッシュビルでブルースを聞くならバーボンストリート・ブルース&ブギー・バー

ロワー・ブロードウェイの有名店

Gruhn Guitars (400番地)

有名スターも利用するギターのお店

Hatch Show Print (316番地)

カントリーミュージックのポスター

Ernest Tubb Record Shop (417番地)

カントリーミュージックのレコード店

 次の「ロワー・ブロードウェイ」はライマン公会堂がある五番街からカンバーランド川沿いの一番街の区間のブロードウェー。数あるライブハウスの中でも特に名高いのはトゥトゥシーズ・オーキッド・ラウンジロバーツウェスタンワールドでしょうか?ライブハウス以外にもカントリーミュージック・ファンにはたまらないお店が集まっています。

 そして、ロワー・ブロードウェイの途中で「セカンドストリート(二番街)」の坂を上って行くと、ここもナイトクラブやお土産屋さんが多い通りです。ラインダンスが評判のワイルドホース・サルーンがあります。ただし、宝塚型のラインダンスではなく横に列を作って踊るお客様参加型のダンスですから早合点しないでください。

Music City Star

Country Music Hall of Fame Museum

 付近には、2001年に「カントリーミュージックの殿堂」博物館の新館がオープンしました。NHLのナッシュビル・プレデターズ(アイスホッケー)のホームブリヂストン・アリーナもあります。カンバーランド川対岸でNFLテネシー・タイタンズのホームLPフィールドには、北米で最古のコンクリート橋脚鉄橋シェルビー通歩行者橋を歩いて渡って行くこともできます。

 橋のたもとリバーフロント公園からは、ナッシュビル・スーパースピードウェイがあるベッドタウンのレバノンまで32マイル(52q)の通勤電車ミュージックシティ・スター号が出ています。将来は、マーフリーズボロも含めて四方八方に6路線を追加する計画があるそうですが、財源不足で当面は現路線の維持さえ危ぶまれているそうです。

================ミュージック・ロウ================

RCA Studio B

 二つめは「ミュージック・ロウ(音楽の町)」。ダウンタウンを西にどんどん行くと、インターステートを越えたあたりでブロードウェイはウェストエンド・アヴェニューに分岐しますが、このあたりがナッシュビルのミッドタウンで、その南がミュージック・ロウ。ミュージック・ロウの中心16番街と17番街には、それぞれイーストとウェストのミュージック・スクウェアというニックネームがついています。

Vanderbilt University
Kirkland Hall

 それというのも、ここには1950年代後半にナッシュビルサウンド・ブームを巻き起こしたギタリストでレコード・プロデューサーのチェット・アトキンスらが使ったRCAスタジオBがあり、周りに放送局やレコード会社、音楽やヴィジュアル系のスタジオがわんさと集まってきたからです。しかし、もともとは住宅街だったせいかしら未だにビジネス街には付き物の喧騒感がないようです。RCAスタジオBは、今でも「カントリーミュージックの殿堂」博物館の別館として観光客に公開されています。

Parthenon (Centennial Park)

 ミュージック・ロウの南のベルモント大学にはベルモント・マンションという観光スポットがあります。イタリアヴィラ様式の別荘で、南北戦争時には2週間ほど北軍の休息所に使われたのだそうです。ミュージック・ロウの西隣は、ノースカロライナのデューク大学やテキサスのライス大学と並び称される南部の名門私立ヴァンダービルト大学です。1873年に鉄道王ヴァンダービルトの寄付により創立されました。

 その北のミッドタウンの一角にはセンテニアルパーク(百周年公園)があります。1896年には、ここでテネシー州の百周年を記念する万国博が開かれました。その時にナッシュビル館として建てられたギリシャのパルテノン神殿のレプリカ(コピー)が美術館として今日まで保存されています。

================ミュージック・バレー================

June Carter Cash at the Opry in 1999

 そして、三つめは「ミュージック・バレー」です。ここには、有名なカントリーミュージックの公開生放送番組グランド・オール・オプリのホームホールグランド・オール・オプリ・ハウスがあります。グランド・オール・オプリは「グランド・オールド・オペラ」の南部なまり、アメリカで最初のラジオ商業放送からわずか5年後の1925年に始まった全米最長寿の存命番組です。

Grand Ole Opry House

Ryman Auditorium

 公開演奏はダウンタウンで始まり、1943年から74年までカントリーミュージックの母なる教会と慕われるライマン公会堂が会場だった時代もありました。1972年に現在のミュージック・バレーにオプリランドUSAというカントリーミュージック系テーマパークができ、2年後に今のグランド・オール・オプリ・ハウスができました。その後、1977年にはサザンホスピタリティ(南部人の温かいもてなし)をモットーに大きなダンスホールと会議場を備えた600室のオプリホテル(現ゲイロード・オプリランド・リゾート)が開業します。

Gaylord Opryland Resort

 これらを経営していたのはグランド・オール・オプリのスポンサーで地元企業のナショナル・ライフでしたが、テキサスの生保による敵対的買収に敗れ、1982年にコンサートハウスもテーマパークもホテルもオクラホマのゲイロード・グループに売却されてしまったのです。

 ゲイロード・グループは特にホテル経営に注力しました。1983年には最初の屋内庭園アトリウム(自然採光の吹き抜け)のを作り、さらに拡張に次ぐ拡張で、今では4つの屋内庭園を持つ約3000室のホテルへと成長しています。カジノがないホテルとしては世界最大なのだそうです。

Gibson Les Paul Classic

 その代わりオプリランドは1997年に売却されてしまって閉鎖、跡地はオプリミルズという都市型アウトレット・モールに変身しました。ここには、ナッシュビル発祥のエレキギターの老舗ギブソン・ギターのお店もあります。オプリランドのアトラクションだったジェネラル・ジャクソン・ショーボートは、その後も継続して運航しています。

Cumberland River & Tennessee River

(注) 私が初めてホテルを訪ねたのは1988年。厳かな雰囲気が漂う高級ホテルで1年先まで予約が詰まっていたものですが、徐々に大衆化して久しぶりに2003年に訪れたときには庭園を子供たちが駆け回るようになっていました。個人的には少し寂しく思いました。

 2010年5月のテネシー洪水ではダウンタウンも被災しましたが、ミュージック・バレーの一帯はカンバーランド川がつぶれたSの字形に蛇行している場所ですから、最低でも2〜3mの高さにまで冠水してしまったそうです。

 ホテルはようやく11月15日に再開できることになりましたが、(9月現在)アウトレットモール再開の見通しは立っていません。グランド・オール・オプリは、洪水以降、ライマン公会堂などダウンタウンの施設を持ち回りで興行を続けていましたが、9月末にはグランド・オール・オプリ・ハウスが復旧して使えるようになったそうです。

================州議事堂と200周年記念公園================

Tennessee State Capitol

 それでは、市内の残りの観光スポットや文化施設をご紹介しましょう。州の議事堂といえば、50州のうち39州までがドーム型の建物なのだそうですが、テネシーは例外の州のひとつ。屋根や柱はセンテニアル・パークのパルテノン神殿とそっくりですね。ギリシャ復興様式は1820〜50年頃のアメリカで大流行した建築デザインですが、議事堂の建設が始まったのが1845年…後で出てきますが、ナッッシュビルにはほかにもギリシャ復興様式の建物がたくさんあります。議事堂の前には、1996年に州制200周年を記念するバイセンテニアルパークができました。

 テネシー・パーフォーミングアーツセンターは、首都ワシントンのケネディ・パーフォーミングアーツセンターをモデルに作られたあらゆる世代のあらゆるジャンルの公演に使われる18階建ての多目的文化施設。ナッシュビル交響楽団やナッシュビル・バレー、ナッシュビル・オペラなどのホームもここです。フリスト・センター・フォー・ヴィジュアルアーツは、旧郵便局の建物を利用してできた新しい美術館で、自らは美術品を所蔵せず、借り物で次々に企画を変えていく面白い博物館です。アドベンチャー・サイエンスセンターは、お子様の夢を育む科学博物館。 

指定したサイズでウインドウを表示