2006年ダービー優勝馬が怪我で安楽死
骨折はサラブレッドには致命傷になります
私がEメール・ニュースを皆さんにお届けするのにはいくつか理由があります。前号でご紹介した「ミスUSA」の記事などあまり皆さんの役に立つ話題ではありませんが、地元のアメリカ人が普段どんな話題に興味を持って暮らしているのか知っていただきたいと思って書きました。今回の「バルバロ」(写真中央…ダービー勝利から1週間後)の悲しいお話もその一つです。
バルバロは、昨年5月5日にルイビルのチャーチル・ダウンズ競馬場で開催された第132回ケンタッキー・ダービーの優勝馬です。ケンタッキー出身馬としては99代目のバルバロは、(日本のディープインパクトのように)全戦無敗で勝ち上がった6頭目のダービー優勝馬となったばかりか、2着に6馬身半というダービー史上60年ぶりのぶっちぎりでゴールインしてみせたのです。
セクレタリアートの再来とうわさされるほどの人気で、アファームド以来28年ぶりの三冠(トリプル・クラウン)とシアトルスルー以来29年ぶり2頭目の無敗三冠馬の誕生が期待されていました。そして2週間後、ファンの興奮が最高潮に達した三冠馬の第2関門プリークネス・ステークスで、事故が起こったのです。バルバロは最初から奇妙でした。いっせいにゲートが開く前に、鼻でゲートをこじ開けてたった1頭でとび出してしまいました。再スタートでは、ダービーでスタートした時よりも、もっと好位置を確保します。でも、ベテランのプラード騎手は突然の異変に気がついて、手綱を引いてバルバロを止め即刻騎乗を下りたのです。バルバロは3ヵ所を複雑骨折して右後脚を引きずっていました。救助チームがやってくる間、プラード騎手は自分の体を寄せてバルバロの大きな体を支えていました。
サラブレッドの骨折は致命傷になります。仮に骨折自体が治っても蹄葉炎という死に至る病気にかかる確率が高く直ちに薬殺されるのが普通ですが、バルバロの場合は馬主の強い要望により快復手術が施されました。昨年の夏には外で元気に歩く姿も見せ、人々に束の間の希望を与えましたが、残念ながら骨折した右後脚をかばう3肢の全てに蹄葉炎を発症。馬主もあきらめて、先日、とうとう安楽死に踏み切りました。
サラブレッドは、500sもの体重を細く引き締まった4本の脚で支えています。1本でも欠けると残りの脚に負担がかかり、ひづめの内部の葉状層というところが炎症を起こし、さらに壊死して蹄骨と蹄壁が乖離してしまいます。これが蹄葉炎で、激しい痛みを伴うそうです。
右の2枚は、ひづめがねじれて一部は蹄鉄に喰い込んでいる蹄葉炎の様子を写したX線写真と標本の写真です。
バルバロの記録
年月日 |
レース |
競馬場 |
距離 |
順位 |
2着との差 |
10/
4/05 |
Maiden |
Delaware |
1マイル(芝) |
優勝 |
8
½
馬身差 |
11/19/05 |
Laurel Futurity |
Laurel |
1
1/16マイル(芝) |
優勝 |
8
馬身差 |
1/
1/06 |
Tropical Park Derby |
Calder |
1
⅛
マイル(ダート) |
優勝 |
3
¾
馬身差 |
2/
4/06 |
Holy Bull Stakes |
Gulfstream |
1
⅛
マイル(ダート) |
優勝 |
1
¾
馬身差 |
4/
1/06 |
Florida Derby |
Gulfstream |
1
⅛
マイル(ダート) |
優勝 |
1
½
馬身差 |
5/
5/06 |
Kentucky Derby |
Churchill Downs |
1
¼
マイル(ダート) |
優勝 |
6
½
馬身差 |
5/19/06 |
Preakness |
Pimlico |
1
3/16マイル(ダート) |
怪我により棄権 |
Barbaro
|
黒鹿毛サラブレッド(牡) |
誕生
|
2003年4月29日 |
死亡
|
2007年1月29日 |
父
|
Dynaformer(1985生) |
母
|
La
Ville Rouge(1996生) |
生産者
|
Mr.
& Mrs. M. Roy Jackson |
生産地
|
Spring
Farm, Nicholasville, KY |
馬主
|
Lael
Stables |
調教師
|
Michael
R. Matz |
競走成績
|
7戦6勝(1棄権) |
獲得賞金
|
$2,302,000 |
|