正体不明の正義の味方
「鞍馬天狗」⇒「月光仮面」⇒「仮面ライダー」
(米)「怪傑ゾロ」⇒「ローン・レンジャー」⇒「バットマン」
テレビジャパンでは、1月18日(金)から8週の予定でNHKの時代劇ドラマ「鞍馬天狗」を放映しています。狂言役者の野村萬斎が主役の鞍馬天狗=倉田典膳を演じる新作ですが、「鞍馬天狗」は、ご存知のように、もとは大佛次郎が書いて1924年(大正13年)に映画デビュー、嵐寛寿郎主演作だけでも1927-56年の間に40本以上という国民的ヒーローです。
ご存じ鞍馬天狗 |
ストーリー展開が複雑ないまどきのドラマもいいけれど、正義が悪に勝つこと保証付きのチャンバラを安心して見るのも、これまたいいものです。
考えてみると、覆面や仮面などで顔を隠したヒーローは、この後、「黄金バット」、「怪傑黒頭巾」、「月光仮面」、「七色仮面」、「ナショナルキッド」、「エイトマン」、「遊星仮面」などを経て、現代の子供向けアクション番組「ウルトラマン」、「仮面ライダー」、「スーパー戦隊」のシリーズに進化して来たのです。
ゾロの仮装 |
そういえば、アメリカにも「ローン・レンジャー」や「スーパーマン」など昔から同じタイプのヒーローがいて、「バットマン」や「スパイダーマン」は最近でも現役で活躍しています。いったい、「正体不明の正義の味方」型ヒーローはいつ誕生したのでしょう?
ゾロの映画ポスター |
という訳で、一生懸命調べたところ、原形は1919年にアメリカの作家ジョンストン・マッカリーが書いた「快傑ゾロ」で1922年には日本の雑誌「新青年」に紹介されたそうです。「鞍馬天狗」は「ゾロ」の翻案キャラクターだったのですね。
鞍馬天狗は、幕末が舞台で、新撰組や佐幕派の悪者を相手に勤皇の志士や庶民を助けて戦いますが、ゾロはメキシコ政権下のカリフォルニアで抑圧された民衆を助けて戦うストーリーです。鞍馬天狗は父の敵小野宗行の娘白菊に好意をもたれますが、ゾロが父から市長の座を奪ったキンテロの姪ロリータに惚れられるところなど脇役のキャストまでぴったり照合します。
ゾロ創作に当たってマッカリーがヒントにした文学や事件はいくつもあるようですが、日本人がよく知っているものに限れば次の3つのストーリーでしょうか?
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イギリス人の女性作家オルツィが1902年に書いた「紅はこべ」
フランス革命時代、罪もなく処刑される貴族や聖職者を革命政府の手から救い出すなぞのイギリス貴族の活躍を描いた小説。 |
A |
フランスの文豪デュマが1844-46年に書いた「モンテ・クリスト伯(岩窟王)」
無実の罪で孤島に幽閉された男が脱獄しイタリア貴族となって次々に復讐を果たしていく小説。 |
B |
イギリスに伝わるロビン・フッド伝説
13世紀、イギリスのノルマン王朝に抵抗して戦ったサクソン人の義賊として吟遊詩人に歌い継がれた民間伝承。 |
架空の人物ゾロが活躍したのは、メキシコが1821年にスペインから独立してから1846-48年の米墨戦争でカリフォルニア、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコ、ワイオミング、コロラドをアメリカに割譲するまでの時代…テキサス独立戦争(1835-36年)で全滅したアラモ砦の勇者と同じように、ゾロはメキシコの「悪代官」と戦ったアメリカの英雄です。
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