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2008年4月15日(第22号)

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野外レジャーの「要注意」…アメリカにも風土病があります

 蚊が運ぶウェストナイル熱とダニ媒介の感染症

  野外レジャーの季節が始まります。広大なアメリカでは、場所により、蛇や熊、ワニ、サメなどの野生動物に注意を払う必要があるのは当然としても、皆さんの身近な場所にも若干の危険が潜んでいることは承知しておいてください。こわがりすぎてもいけませんが、予防方法や救急手段を一通り頭に入れた上で、すばらしい季節を思う存分楽しんでください。

@ポイズン・アイビー(Poison Ivy)によるかぶれ

ポイズン・アイビー

 覚えておいでですか?映画 「キル・ビル」で有名な女優ユマ・サーマンが1997年の「バットマン&ロビン」で演じたセクシーな悪役キャラクターが「ポイズン・アイビー」です。

 ゴルフ場でボールを林に打ち込んで探すうちに、茂みの中のポイズン・アイビーに触れ、手足や顔にひどいかゆみを伴うかぶれができるというのが典型的な被害です。似たような草木が多いので茂みには近づかないのが一番ですが、いさぎよくボールをあきらめきれない人は写真を見てしっかり覚えておきましょう。葉っぱ3枚が1組のセットになって枝の先についているのが特徴です。

 外務省の在外公館医務官情報(ワシントン)によりますと「最初はこの草に触った手足や顔にうすくブツブツが出来ますが、しだいに広がり、水疱を作ります。普通の家庭用の軟膏などでは治りにくく、水泡がつぶれて痕(あと)になったりしますので、はやめに医師を受診することをお勧めします。自宅の庭や道路に生えていれば専用のスプレーを使って除草します。このスプレーは劇薬の一種ですので、ご使用にあたっては指示をお守りください。また枯葉でも皮膚炎を起こしますので、手袋をするなど処分には注意が必要です。」とのことです。

Aウェストナイル熱(West Nile Fever)

病原体のウィルスを媒介する

ヒトスジシマ蚊(Asian Tiger Mosquito)

 ウェストナイル熱は1937年にアフリカのナイル川上流(ウガンダ)で発見された日本脳炎に似た病気で、蚊が媒介して人や動物に感染します。アメリカでは1999年の夏に上陸、ニューヨークの周辺だけでも発症者62名(入院治療59名、死亡7名)を数えたそうです外務省の在外公館医務官情報(ニューヨーク)。日本では、2005年にロスアンゼルスから帰国した会社員の発症が確認されたものの、防疫体制をしいて今のところ水際で食い止めています。

 病原体はウイルスで潜伏期間は通常2〜6日、発熱や頭痛、のどや背中の痛み、筋肉痛、関節痛などが主症状ですが、発疹やかゆみ、疼痛を伴い、リンパ節が腫れ腹痛、嘔吐、結膜炎などの症状が現れることもあります。感染者のうちで発症するのは2割程度で、さらに脳炎や髄膜炎を起こすのは発症者の3〜3.5%ですが、最悪の場合は呼吸不全などで亡くなってしまいます。ご高齢者は、特にお気をつけください。

ウェストナイル熱の感染状況 (2007) アメリカ疾病予防管理センター 

 最近は西部の平原や山岳地帯で感染が拡大しているようです。蚊に限らず虫刺されの予防にはスプレーなどの虫よけ(Insect Repellent)が有効です。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)はDEETという成分が30〜50%含まれるものを推奨していますが、日本の基準値(最高12%)に比べると極めて高い濃度ですから注意して使ってください。もともとは米軍がジャングル戦のために開発した薬剤だったのだそうです。

 子供の場合には、長袖の上着を着せたり、ズボンをブーツや靴下の中にたくし込んだり工夫して、虫よけの塗布量は少しでも減らしましょう。子供同士に任せず、大人が手のひらや目や口を避けて丁寧に塗ってあげなければいけないのは当然のことです。

 そのほか特に留意したい点は、

1. 衣服へ塗る場合、内側(皮膚に直接触れる部分)へ塗布しない。

2. 長時間塗ったままにしない。子供約4時間、大人約8時間以内が目安。さらに長時間にわたって使用する場合は、薄く塗るかまたは低濃度のものを使用する。

3. 帰宅後は、石鹸などを使い速やかに洗い落とす。

4. 日焼け止め併用の場合は、日焼け止めを最初に塗りその上に虫よけ剤を塗る。

5. 一般論として妊婦の使用は薦められない。

Bライム病

黒足マダニ(Blacklegged Tick)

 「運悪く木の下を通りかかると、チックという虫が降ってきて身体の中にもぐり込み心臓を食い破られて死ぬことがあるから気をつけなさいよ」…渡米したばかりの人に針小棒大な話をしてこわがらせる人がいますが、この話も全くのホラではありません。北米には、野外のダニ(tick)が媒介するこわい病気がいっぱいあります。

 ライム病(Lyme Disease)という言葉を耳にされたことはありませんか?1975年にコネチカット州のオールドライム(Old Lyme)で確認されたこの病気はアメリカ北東部の「風土病」で、特に日本人駐在員も多く住んでいるニューヨーク市周辺の住宅地で恐れられています。

幼児の頭皮中に付着したダニ

 病原体はボレリア(Borrelia)と呼ばれる細菌ですが、黒足マダニ(または鹿ダニ)というマダニが媒介します。マダニはクモとダニの仲間で8本足ですが、家ダニ(Mite)より大型で固い身体をしています。

 ライム病が多発するのは黒足ダニが幼虫で吸血活動が活発な5月から9月です。48時間以内にダニを除去すれば病気にはならないと言われていますが、この頃のダニは大きくても体長は5o以下で分泌物が痛みやかゆみの感覚を抑えてしまいますか

牛眼紅班(Bull's-eye Rash Pattern)

ら、噛まれたことに気づくのは残念ながら患者さん全体のわずか2割です。ダニの口は一度喰らいついたら簡単には離せない形状をしていますから、頭部まで確実に除去するには皮膚科のお医者さんに頼んだ方がよいかもしれません。

 ダニに刺されて翌日から1ヶ月の間に、約8割の患者さんにライム病特有の遊走性紅班(牛眼紅班)が現れます。その後、菌が全身に拡がるに従い発熱や倦怠感、筋肉痛、関節痛などが起き、神経障害を起こす人もいます。(⇒さらに詳しくは万有製薬HP「メルクマニュアル家庭版」) 

クロアシマダニ(シカダニ)の分布 (1907-1996) アメリカ疾病予防管理センター

生息地:最低6個体または幼虫-若虫-成虫のうち2世代を確認 発見地:最低1個体を発見

Cロッキー山紅班熱ほかダニ媒介の病気と対策

ロッキー山紅班熱の発疹

 ダニ媒介の風土病はほかにも数々あり、発生地も全米に分布しています(いずれ一覧表を作って皆さんのお目にかけます)。ライム病と並んで有名なロッキー山紅班熱(Rocky Mountain Spotted Fever)は1896年にアイダホ州で発見されしばらくロッキー山脈地方特有の風土病と考えられていましたが、実は州でいえばノース・カロライナとオクラホマ、地域的には南東部大西洋岸諸州に発生例が多い病気です。

 媒介するダニは、ロッキー山脈地帯に巣食う森林ダニ(Wood Tick)とその他の地域をなわばりとする犬ダニ(Dog Tick)で、黒足マダニ(鹿ダニ)より一回り大きいそうです。病原体はリケッチャで、発疹チフスに似た症状を起こします。かつては発症者の3割が落命した恐ろしい病気で、特効薬ができた今でも3〜5%の死亡率があるそうですから決して油断できません。

 ダニ対策にはウェストナイル熱蚊の刺咬予防項にも書いたスプレーなどの虫よけが有効ですが、状況に応じてより細心の注意を払ってください。

追加して留意したい事項は、

1. 自宅の庭でも、子供を遊ばせるには茂みのない広い場所が必要。草木には防虫剤を散布し害虫誘引器(bait)を備える。鹿が出る場合は、鹿が好む草木を抜き侵入防止柵を設ける。

2. ダニがいそうな場所に行くときは、ダニが付着しても発見しやすい「色の薄い着衣」をする。ズボンは靴下の中にたくし込み、山歩きなどでは、できるだけ茂みや樹木から離れ道の真ん中を歩く。

3. 一部のダニは靴を這い上がり靴下の中にも侵入してくるので、帰宅後は足先やくるぶしにダニがついていないかチェックする。特に一つ星ダニ(*Lone Star Tick)の生息地では注意。

*このダニは背中に大きな斑点があるのでローンスター(一つ星)と名付けられました。ローンスターのニックネームで知られるテキサス州の東半分にも生息していますが、広くケンタッキー、ミズーリを含む南部一帯とメイン州に至る東部の沿岸部他州に分布しています。

4. 自庭も含め野外に出た日には、本人の身体はもちろん子供の身体を調べる。特に重要な箇所は、わきの下、耳の内外、へその中、ひざの裏、髪の毛の中と生え際、股間、ウェスト周り。