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2009年11月15日(第41号)

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アメリカの医療改革…下院を通過して上院で審議中

 法案が成立すると国民皆保険がほぼ実現します

 医療改革法案は、11月7日に賛成220-反対215の僅差で辛うじて下院を通過しました。民主党のペロシ下院議長は、この改革を1935年の社会保障(ソーシャルセキュリティ)と1965年のメディケア(Medicare)創設に次ぐ歴史的快挙と讃えましたが、成立までの前途は決して明るくないようです。

医療改革はクリントン国務長官の悲願

1993-4年にファーストレディーの立場で挑戦しましたが、野党共和党や保険会社、製薬会社、中小企業などの反対で改革は挫折しました

 今後、法案は上院に回って審議されるのですが、上院の勢力は民主党60:共和党40…議事妨害を阻止できる議員数は60名ですから、民主党からひとりでも反対に回ればスムーズな議決ができなくなってしまいます。

 大手日系企業は従業員の医療保険を会社で負担していますが、地場の中小企業の場合は従業員が会社のプログラムに自己負担で任意加入しているケースが珍しくありません。無保険者の多くは、仕事はしているものの、収入が足りなくて保険料を支払えない人たちです。

無保険者層

富裕層

中流層

Medicare

65歳以上

無保険者

Medicaid

←年齢→

 右の図をごらんください。詳しい条件は省きますが、65歳以上の人々はメディケアという国の保険でカバーされます。働けない事情のある人々などの最貧困層はメディケイドというシステムで救済されますが、メディケイド対象となるほど貧しくない人々が無保険者…アメリカの医療保険は高負担ですから、貧困層というよりは、中流の下層くらいの人々が不景気のあおりで無保険になってきているところがこわいところです。

 全米で、完全な無保険者は約4700万人で、不完全な保険契約者まで数えると約8670万人…メディケア対象の65歳以上を除くとアメリカ人の29%、約3人にひとりが無保険者と推定されています。

無保険者の比率

(ベスト 10州)
 1. Massachusetts 5.4%
 2. Hawaii 7.9%
 3. Minnesota 8.5%
 4. Wisconsin 9.0%
 5. Iowa 9.4%
 6. Maine 9.6%
 7. Connecticut 9.7%
 8. Washington DC 9.8%
 8. Pennsylvania 9.8%
10. Vermont 10.3%
(ワースト 10州)
 1. Texas 25.2%
 2. New Mexico 23.2%
 3. Florida 20.2%
 4. Alaska 19.4%
 5. Louisiana 19.3%
 6. Arizona 18.9%
 7. California 18.5%
 8. Mississippi 18.4%
 9. Nevada 18.0%
10. Georgia 17.8%

資料: stetehealthfacts.org(全米平均 15.4%)

 一部の州では、既に州レベルの医療改革を進めています。マサチューセッツ州では2007年に30万人の人々が州政府の保険で救済されましたが、そのために病院外来の待ち時間が長くなり医療関係者の労働環境が悪化したとの負の影響も報告されています。

 左の表ではワースト10州の多数をヒスパニック系住民が多い州が占めています。マスコミの表立った報道はありませんが、医療改革反対の世論のベースには人種や不法移民の問題も存在するのでしょう。

 さて、法案が通れば、企業の医療コストにも影響があるかもしれません。日系企業の経営幹部や人事・総務の皆さんもご心配でしょうから、今回の法案の骨子をご紹介してみましょう。

@ 国営の医療保険制度を作り、民間の医療保険と競争させる。

A 簡単に各社の医療保険のカバレッジ(補償範囲)や保険料を比較できる市場を創設する。

B 2013年以降、ほぼ全ての国民に医療保険の取得を義務付ける。

C 全ての医療保険は、希望があれば、両親の保険で27歳未満の同居する子をカバーするよう求められる。

D 中低所得層が医療保険を取得できるよう連邦政府が金銭的に補助する。

E 保険会社が既往症を理由に契約を拒否したりカバレッジ(補償範囲)を制限したりすることを禁止する。

F 保険会社が生涯補償限度額を設けることを禁止する。

G メディケイドの条件を緩和し、対象者を増やす。

H 諸控除後の年間所得が50万ドル以上または夫婦で100万ドル以上の人々から5.4%の課金を徴収する。

I 新法に違反する個人や法人に罰則を設ける。

 以上をお読みになれば、現在の医療保険の問題点がお分かりになるでしょう。アメリカの医療保険は高負担で、保険料が特に安いわけではないのに、既往症の補償に制限があったり、高額医療を長期に受けることが難しかったり、いざというときに役に立たないプログラムが横行しています。補償条件は複雑で透明性が低く、毎年更新の都度、料金とともに変わりますから、専門知識のない人々が、本人と家族に最適な医療保険を選ぶのは不可能です。オバマ政権は、医療保険業界の健全な競争が阻害され保険会社が儲けすぎていると考えているのでしょう。

 この法案が成立すると、3600万人の無保険者が救済され、国民の96%が医療保険でカバーされるようになるそうです。

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