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アメリカ生活・e-ニュース

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2010年9月15日(第51号)

★KDDI mobile ニュース★ 日本語スマートフォン HTC HERO 新登場 …日本語で音声検索、ワンタッチ(フリック)でカナ入力、GPSでナビや現在地の天気予報


北米のお天気の長期予報…ラニーニャの続報です

 南部南西部で干ばつ! 水不足や山火事の心配は?

予想降水量(例年より 多雨/多雪 少雨/少雪)

10月~ 12月 来年1月~ 3月

 先月号では、東太平洋の海面水温が上がるエルニーニョと呼ばれる現象が春に終わり、その反対に東太平洋の海面水温が下がるラニーニャ現象が始まったため、秋にはハリケーンに警戒が必要で、今年は南部を中心に暖冬になるでしょうとお伝えしました。

 ところで、ラニーニャ現象といえば、もう一つ予想されるのが南部や南西部の少雨です。最新の長期予報を見ても、これから半年にわたり南部や南西部では平年より少なめの降水量が予想されています。

=====干ばつによる水不足=====

全米の干ばつ最新状況 (随時更新)

異常乾燥 干ばつ ひどい干ばつ 極度の干ばつ 異常干ばつ

米国農務省www.drought.gov

 日本では干ばつと水不足が必ずセット。でも、アメリカのように国土が広い国では事情が違います。熱波と少雨で土地が乾燥するのが干ばつですが、ダムの貯水や地下水が豊富な限り農作物にも市民生活にも深刻な問題が起きません。

 例えば私たちが住むケンタッキー州のレキシントンの場合、昔は水道代もただ同然で干ばつでも芝の水遣りや洗車が1日おきに制限される程度の水不足で済んでいたのですが、地球温暖化でロッキーややアパラチアなど山岳地帯での降水量が減り、全米各地でで水不足が起こりやすくなってきたようです。


 前回ラニーニャ真っ最中の2007年秋には、ジョージア州やフロリダ州を中心に南部の広域で深刻な水不足が起きました。アトランタでは、市民が減り行くレイニア湖の水位をハラハラして見守る日が続き、チャタフーチー川下流のアラバマ州やフロリダ州と上流のジョージア州の間で水争いが起きました。テネシー州の小村オームで水源の泉が枯れ、1日に3時間給水という日本でも滅多にない節水を強いられたのもこの時です。

 フロリダ半島の地底には地下水脈が縦横無尽に走っていますが、1930年代にハリケーン対策で始めた治水工事の副作用で内陸の保水力が落ち、今では干ばつ時に大都市の水需要を支えきれなくなってきています。


 しかし、アメリカ南西部の砂漠地帯ではコロラド川が唯一の大水源…巨大な二つのダム湖の水量が恒常的に不足する状況が続いていますから、ひどい干ばつがあるとジョージア州やフロリダ州より深刻な事態が起きる可能性があります。

 コロラド川の流域は砂漠地帯です。ミード湖はラスベガス市民の大事な水がめですが、2010年夏には満水時のわずか4割という危機的水量に減ってきています。上流に有名なグランドキャニオンがあり、さらに上流に同じような巨大ダム湖のパウエル湖があります。水量が減ったせいで、両湖の湖岸にはバスタブリング(浴槽の汚れの輪)と呼ばれる高水位の跡を示す線がくっきりと残っています。下流のハバス湖からはセントラルアリゾナプロジェクト送水管でフェニックスとツーソン向けに、コロラド川送水管でロサンゼルス向けに水が供給されています。


 全米で水不足が懸念される地域は、ほかにもたくさんあります。ミシシッピー川の中流域では、水源の地下水がやや心細くなってきているようです。もしもグレートプレーンズなど穀倉地帯の地下水源が枯渇するようなことがあったら、世界の食糧事情が一変するとんでもない事態に発展するでしょうが、北部のコーンベルト地帯にふんだんに水を消費するエタノール工場が多数できて心配も少しずつ増しています。

=====干ばつと山火事の危険度=====

米国本土の山火事危険度最新状況(随時更新)

観測所  低い 普通 高い かなり高い 非常に高い

米国農務省林野部www.wfas.net

 干ばつで、もう一つこわいのは山火事です。今年7月の下旬に猛暑のロシアで起きた山火事は、モスクワ付近の泥炭地が自然発火して始まり、一時は遠くバイカル湖方面にまで飛び火…9月に入っても未だ鎮火していません。

 今年のアメリカの山火事は、今のところ発生件数でも焼失面積でも平年を大きく下回っていて結構なことですが、前回ラニーニャの2007年と翌年にかけてはカリフォルニアを中心に連鎖的な山火事が頻繁に発生しましたから、今秋と来春は油断できないでしょう。

 毎年、日本では2千件前後の山火事が発生し約15q2の森林が焼失するのだそうですが、アメリカでは平均8万件で約3万q2が焼失するというのですから、規模が違います。日本人の皆さんは、カリフォルニアでもきっと安全な地域を選んで住んでおられることでしょうが、キャンプ中に山火事に巻き込まれたりするおそれがないわけでもありません。そこで、2007と08年に発生した大規模な山火事について調べてみました。


 山火事の発生件数は約25年前に比べて横ばいですが、焼失面積は4倍に増えています。原因は地球温暖化と考える人が多いようです。エルニーニャとラニーニャの年は日本の気象庁の資料をもとに色分けしました。ラニーニャの年や翌年に焼失面積が増える傾向があるように見えます。


  2007年

ジョージアフロリダ森林火災('074~6月)

'0710月加州森林火災('0710~11月)

…ジョージア・フロリダ森林火災…

Okefenokee Swamp

 4月16日、ノーイースターと呼ばれる春の嵐が吹き荒れ、ジョージアとフロリダの州境にあるオキフェノーキー湿原では強風で木が倒れて高圧線に接触、山火事が発生しました。次に襲来した亜熱帯性低気圧アンドリアも、落雷と強風で5月8日に新たな火災を引き起こし火はジョージアからフロリダ州内に燃え広がりました。

 続く熱帯性暴風雨バリーは三度目の正直で大量の雨を降らせ6月22日に山火事は鎮火しましたが、計2400q2を焼き尽くしジョージア州でもフロリダ州でも史上最大の森林火災となりました。インターステートは閉鎖され、煙はフロリダ南部のフォートローダーデールやミシシッピー州まで届いたそうです。

…ミルフォード森林火災(ユタ州)・マーフィー森林火災(アイダホ州)…

 この年の7月には、ユタ州では新記録の1500q2を焼く山火事、北隣のアイダホ州でも過去10年では全米3位にランクされる2600q2を焼く山火事がありました。そういえば、私たちが住むケンタッキー州のレキシントンでゴルフボール大の雹が降り、保険で屋根の修理を頼んだのもこの年の6月…全米でお天気は大荒れだったのですね。

…2007年10月カリフォルニア森林火災…

アーバイン(Irvine)付近の消火作業

 ロサンゼルス西方のサンタバーバラからメキシコ国境に近いサンディエゴに至る南カリフォルニアの大都市圏を取り巻くように山火事が発生、10月20日から11月9日まで19日間燃え続けました。原因は、強風による送電線の断線から交通事故や子どもの失火、放火まで様々ですが、晩秋から冬にかけて山岳地帯から南カリフォルニアに吹き降ろす乾燥したサンタアナ風(Santa Anna Winds)が風速40m/秒で火勢をあおったのです。南カリフォルニアでは、4年前の2003年10月にもサンディエゴとロサンゼルス近郊で同時に大きな山火事が起きたばかりでした。

サンディエゴの避難民

 サンディエゴ周辺の50万人をはじめとしてハリケーンカトリーナのニューオリンズ襲来時に匹敵する約百万人の住人が避難、少なくとも1500軒が全焼し2000q2が焼失したそうです。

 消火には6千人を超える消防士が当り、連邦政府軍と州兵、さらに60人のメキシコ消防士がこれを加勢しましたが、ついには非暴力犯罪で服役中の囚人3千人まで動員されたというのですから正に非常事態でした。死亡者は9人、61名の消防士を含む85人が負傷、放火容疑者1人が銃撃戦の末に警官により射殺されています。


  2008年

'08年夏加州森林火災('085~8月)

'0811月加州森林火災('0811月)

…2008年夏カリフォルニア森林火災…

 カリフォルニアの少雨は3年目、特にこの年の春の干ばつは観測史上でも最悪でした。乾燥し切った森林や潅木林で失火による山火事は既に5月22日に始まっていましたが、6月21〜22日の週末の暴風に伴う落雷により北部と中部のカリフォルニア各地で2千件以上の火災が一気に発生しました。

地図で被害状況の説明を受ける

シュワルツネッガー知事

 とにかく火災現場が広範囲で多すぎました。連邦政府軍と州兵に加えギリシャ、チリ、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ニュージーランドから国際支援もあり、総勢2万人以上が消火に当たりましたが、6300q2を焼き尽くすカリフォルニアの史上最悪の山火事になってしまいました。

 火災があまり大都市周辺に広がらなかったのは不幸中の幸いでしたが、セントラルバレー一帯とベイエリアは有害な煙に包まれ、内陸では気温も40℃台半ばまで上昇…ナパバレー近くのベリエッサ湖では一時52℃を記録したほどです。


…2008年11月カリフォルニア森林火災…

1115アナハイムヒルズ付近91号線

 焼失面積は175q2で2007〜08年のカリフォルニアの山火事の中では規模が小さかったともいえますが、ロサンゼルスやオレンジカウンティの日常生活圏が燃えただけに市民の衝撃はことさらだったに違いありません。

 11月13日、最初の火事はスピルバーグやオプラ・ウィンフリーなどのセレブが住むモンテシトとサンタバーバラの一角で若者のキャンプファイアの火の不始末が原因で起き、210軒の大邸宅が焼失しました。翌日、火はロサンゼルス市北部のシルマー地区に飛び火して、今度は480軒のモービルホーム(低価格の簡易住宅)の住人が焼け出されました。

 そして、3日目の火事はついに中流市民が暮らすオレンジカウンティのリバーサイド・フリーウェイ(州道91号線)の周辺で発生、その後10日間で314軒の住宅を焼失したのです。ユーチューブの動画をごらんください。

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