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2013年10月15日(第88号)


SUVは被害者?加害者?…皆さんなら、どうする?

 白昼のニューヨークで「暴走族」がSUVを襲撃

SUVが追跡されたルート

 ニューヨークのウェストサイド・ハイウェー(ヘンリー・ハドソン・パークウェー)といえば、ニュージャージー州フォートリーからマンハッタンに通う日本人駐在員の通勤ルートですが、それほどニューヨーカーに身近な場所で暴走族の襲撃事件が起き、大騒ぎになっています。


暴走族のイベント


 9月29日は、ニューヨークの曲乗りライダーが主催するラリー「ハリウッド・ブロックパーティ」の当日でした。

 昨年の第1回のイベントでは、タイムズスクエアに1000台を超えるオートバイが集まり集団走行に興じましたから、今年はニューヨーク警察が、あらかじめ各所に警官を配備。多数を逮捕して、メンバー全員が一堂に会する事態は阻止することができました。

 しかし、それでも、万事めでたしとはいきません。その日の午後2時半頃、ウェストサイド・ハイウェーでは、20〜30台のバイクが集団走行していました…それから6分30秒の事件の経過については、仲間がヘルメット搭載カメラで捉えた映像(オリジナルYouTube投稿動画)が全てを説明してくれます。


暴走族が包囲⇒仲間を轢きSUV逃走⇒追跡⇒袋叩き


 中央車線を走っていた1台の高級SUVが、暴走族の一群に追いつかれ真ん中に孤立してしまいます。左脇を走っていたバイクが前に出てきて、急に減速。SUVはクラクションを鳴らしますが、追突してしまいました。いかにも、バイクが、故意に追突させようとしたように見て取れます。

 すると、他のバイクも停車し、歩いてSUVに向かう仲間もいて、一触即発のきな臭い空気が漂いました。しかし、なぜか分かりませんが、その緊張は数十秒で解け、大方のバイカーはSUVに背を向け、バイクに戻ろうとしたかに見えます。

 ところが、正に一件落着と見えた瞬間、SUVが急発進して何かに乗り上げます。SUVは、ボストンから来てイベントに参加したラップ歌手のジェイ(32歳)とほか2名を轢いて逃げ出したのです。ジェイは両足骨折で肺が破裂している上に、一命を取り止めても脊髄損傷により全身マヒが残るおそれが強い重傷です。

 SUVを運転していたリエン氏は、見たところ東洋系で33歳の銀行員。奥さんと2歳の娘が同乗していました。取り囲まれた恐怖にパニックを起こしたものと見られますが、その後は仲間を傷つけられて怒る暴走族に追われ、2.5マイル(4q)北のジョージ・ワシントン橋のたもとでついに捕まり袋叩きに遭ってしまいます。


SUVが轢いたのはトラブルの仲裁役


 事件の一部始終が動画に記録されていたために、事件後、関係者は続々と逮捕されています。真っ先に逮捕されたのは、SUVの前で減速し、事件の発端を作った23歳のクリストファーですが、暴行に加わらなかったために微罪で済んでしまうかもしれません。危険運転の故意については否認しています。

 ヘルメットでSUVの窓を叩き割ろうとしたバイカーなどが次々と逮捕されていますが、並走していたグループの中には非番の警察官が何人も含まれていて、少なくとも暴行を止めなかったことが問題にされています。

 ケガの治療で入院しているSUVのリエン氏の方は、今のところ逮捕されていません。轢かれたジェイには有名な敏腕弁護士がつきリエン氏の行為を糾弾していますが、そのコメントによれば、ジェイは暴行に加わっていないどころかトラブルの仲裁役で、仲間を説得し終わりバイクに戻るところを、背後から轢かれたのだそうです。

 リエン氏の奥さんは、生命の危機を感じ(ジェイを轢いて)逃げるしかない状況だったと弁明しており、SUVの責任については、警察も判断に窮しているように見えます。


さわらぬ神にたたりなし!!


Wheelie

 上のABCニュースの動画にも出てきますが、今年1月には、カリフォルニアで暴走族がガールフレンドの誕生日を祝うため、仲間を集めて高速道路を一時占拠しました。規模は様々ですが、全米各地で大小のバイカーの集まりがあり、時には今回のようにとおりがかりの車が襲われるケースがあります。皆さんは暴走族の一団に出くわしたら、どうなさいますか?

 日本の電車の車内でマナーの悪い若者を注意するのは、正義感あふれ褒められる行為かもしれませんが、アメリカで多数の暴走族に立ち向かうのは無謀です。「さわらぬ神にたたりなし」のことわざ通り、一団が通過するのを傍観して、おとなしくやり過ごしましょう。

Burnout

 今回の投稿動画でも、よく見ると、最初のトラブル発生時に、白いワゴンが右側車線を暴走族にとがめられずに進んで行く姿が映っています。

 ここからは私の推理ですが、事件のきっかけを作ったクリストファーがSUVにムカついた理由は、

@ 最低でも13万6千ドルする高級SUVのレンジローバーが、

A 暴走族が来たら減速して道を譲る人が多い中、(暴走族をたしなめるように)制限速度を守り、中央車線を堂々と運転していた。

B 窓の外からのぞくと、運転席には仲間と同年配で幸せそうな家族連れの東洋人がいて、邪魔そうにクラクションを鳴らした。

 暴走族といっても、仲間で道路を独占してバイクを楽しみたい若者が大多数で、他人と積極的にトラブルを起こそうと思ってはいません。皆さんに、不法行為を少し大目に見てあげる心の余裕があれば、リスクは格段に低くなるに違いないでしょう。