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2013年12月15日(第90号)


自治体が仕掛ける交通違反のワナに注意!!

 オハイオ州で「監視カメラ」の是非をめぐり論戦

 当社WEBトップページの中段にアメリカ生活・e-運転というコーナーがありますが、ご存じですか?表紙は全米各地のガソリンスタンドの最新価格地図ですが、タブをクリックするとシートベルトやチャイルドシート、ヘルメットの着用義務など各州の交通ルールを地図を使って説明しています。

 この資料には州別の監視カメラによる交通違反取締りの対応も載っていますが、今オハイオ州では監視カメラの是非について世論を二分する議論が巻き起こっています。


シンシナティ郊外の悪質な村に監視カメラ撤去命令


 昨年9月に、シンシナティ北部郊外のエルムウッドプレースという小さな村が2台の監視カメラを設けました。広さはセントラルパークの1/4の0.8平方キロですが、付近の工場に通う人もいて1日の交通量は1万8千台。周辺の制限速度は時速35マイルですが、村の中では25マイル…取締りの基準も厳格で、たとえ2〜3マイルオーバーでも違反を問われます。

 最初の月だけで、村の人口の3倍に当たる6600人がスピード違反に問われました。罰金は1件$105で40%が監視カメラの運営会社に支払われますが、村にはその後もあわせて100万ドル以上の収入があったと推定されています。

 しかし、被害をこうむったのは村民や通勤者です。わずか13分の往き帰りに違反チケットを2枚切られる人も出る始末。失業中のシングルマザーなど罰金の支払いに困る人々も多く、ただちに抗議の大合唱が起こりました。今年3月にカウンティの裁判所の判事に「ハイテクのいかさま手品」と決め付けられ、村は監視カメラの撤去を命じられました。


全米で悪名高いトラフィック・トラップ(交通違反のワナ)


 オハイオ州には、悪質な自治体の先例がありました。州都コロンバスの西の幹線道路の入り口にニューローマという人口たった60人の村があり、年間40万ドルの罰金収入を享受していました。制限速度は村に入ると時速45マイルから35マイルに変わりますが、標識が他の看板に埋もれてわざわざ目立たないように設置されていました。ナンバープレートの汚れやフロントガラスにヒビが入っていたというような微罪でチケットを切られたり拘留される人もいたそうです。

 問題を重く見た州政府がこの村を検査したところ、幹部の使い込みなど不正行為が次々と明るみに出ました。会計はズサンで、選挙違反も15年間に23件発生していました。州議会も立ち上がり「人口150人以下かつ0.5平方マイル以下」で「財政または選挙管理が破綻」している村は解散させることができるという新法を制定し、ニューローマ村は2004年に解散させられました。

 アメリカの交通規則は自治体の裁量任せの部分が大きいので、悪質な自治体がトラフィック・トラップ(交通違反のワナ)を仕掛けることができます。話題がそれますが、AAA(アメリカ自動車協会=アメリカ版JAF)が注意を呼び掛けている全米のトラフィック・トラップをご紹介しましょう。

 トラフィック・トラップのように特別なワナを設けなくても、スピード違反を厳格に取り締まる地域では制限速度を1マイルでも超えることがないよう慎重な運転が求められます。特にワシントンDCに車で出かける機会やディズニーワールドにI-75経由で向かう機会は、どなたにもありそうですから、お気をつけください。

◆ トラフィック・トラップ

フロリダ州ワルド(Waldo)の国道301号と州道24号 ⇒ YouTube動画

フロリダ州ローティ(Lawtey)の国道301号 ⇒ YouTube動画

◆ 厳格な取締りで有名な地域

(他の地域なら時速5〜10マイルの速度超過は見逃すのが通例ですが…)

ワシントンDC(市内全域)

フロリダ州チーフランド(Chiefland)国道19号と国道27号バイパス

フロリダ州ガルフブリーズ(Gulf Breeze)国道98号

ウェストバージニア州サマービル(Summersville)の国道19号約5〜10マイル

ジョージア州ラウンズ郡(Lowndes County)のI-75号

ミズーリ州の国道54号(国道61号から約30マイルの区間)

アーカンソー州のI-55号(I-40号と交差する地点からミズーリ州境の区間)


監視カメラ対策…赤信号の右折は停止線で一旦停止


 元に戻りましょう。エルムウッドプレース村の事件をきっかけに、今年6月オハイオ州の下院は、監視カメラの設置を学校の周辺だけに制限する法案を可決しました。しかし、オハイオ州では、シンシナティを除く全ての大都市で監視カメラが使われていて、交通違反の罰金が減れば市財政にも影響する大問題…今度は、監視カメラ擁護派も立ち上がり、法案は州議会の上院で立ち往生しています。

Insurance Institute for Highway Safety

 果たして、監視カメラは交通事故の防止に役立つのでしょうか?上の動画は監視カメラ擁護派の動画で、監視カメラを設置すると交差点内の事故が劇的に減ると主張していますが、監視カメラの反対派は交差点の手前で追突される事故が増え、総数で事故は減らないと反論しています。

 私たちが住むケンタッキー州レキシントンでは、赤信号に変わってからも数秒は交差点に進入する車が多く、黄信号であわてて急ブレーキをかけると、後続車に追突される危険が増します。ドライバーの質には地域差がありますから、そこまで計算し気をつけて運転してください。

Red Light Camera

 実際、交差点で監視カメラに摘発される違反の多くは「非常に危険な信号無視」ではなく、「停止線の遵守違反」です。

 車が停止線を越えて停止すればもちろん違反ですが、いわゆる「ローリング・ライトターン」または「ロールスルー・ザ・レッドライト」…赤信号で安全を確認して右折する際に、いったん停止線でしっかり止まらず、ズルズルと交差点に入ってしまうと交通違反になってしまいます。


泣き寝入りか?ゴネ得か?


 監視カメラにはプライバシーの問題があり、精度を上げて車内の運転者の顔をはっきり写すことができません。そこに「自分は運転していない」と言い逃れる余地があります。自治体次第ですが、違反チケットを受け取っても、罰金を払わずほっておいて全く咎めがないケースがあるようです。

 少なくとも、違反チケットの中身はしっかりチェックしましょう。通常3枚の連続写真が載っていますが、写真の車が皆さんの車に間違いないか?その日時にその場所で運転していたのは誰か?写真で車の交通違反が明白に記録されているか?などが要点です。メリーランド州ボルチモアの違反チケットで、交差点の停止線で止まっている車の写真が3枚載っていた例もあります。

 上の動画は監視カメラ反対派の動画で、ロサンゼルスの交通裁判所に出頭する人々の長い行列が写っていますが、時間を惜しまなければ「自分に心当たりがない」と釈明して済むのでしょう。しかし、それも英語の達人でなければ面倒な話ですから、何とか違反チケットを逃れる方法を追求しましょう。

 北米の監視カメラ設置点を示す地図があります。監視カメラのほか取締りの多い場所なども示す地図もあります。読者の情報をもとに成り立っているサイトで全てを網羅しているわけではなさそうですが、スマホにダウンロードして役に立ててください。カーナビにも、監視カメラを警告してくれるソフトがあります。