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2014年7月15日(第97号)


日本は富岡製糸場、アメリカはルイジアナ州ポバティポイント

 世界遺産に紀元前2千年の巨大インディアン遺跡

インディアンの祖先の移住

ポバティポイント案内図

航空写真(⇒Googleマップ

 アメリカのインディアンの遺跡というと、16世紀に白人がやってくる直前の時代のものが大部分ですが、インディアンの祖先がアジアから渡ってきたのは約1万5千年前…ベーリング海峡はまだ陸続きで、カナダの氷床が融けはじめて裂け目ができていた時代で、もっと古い遺跡もあるはずです。


半円形の遺構


 と思っていたところ、案の定、今回新しく世界遺産に登録されたルイジアナ州のポバティポイントは紀元前2000〜700年に栄えた古代文明の跡でした。

 この遺跡は西南西に100qの場所にある紀元前3500年のワトソンブレーク遺跡とともに北米最古。

 中央の半円形の遺構は直径1200mとサイズ的に同時代の世界各地の文明に引けを取らない大建造物で、あまり痕跡を残さずに消えてしまった古代狩猟採集民の生活を知る上で考古学的に貴重な遺跡です。

 遺跡の建造目的は村落だったとか、交易所や宗教施設だったとか諸説があって未確定。当時の文明はミシシッピー川の両岸それぞれ100マイル(160q)圏に及んでいたようで、域内には100ヶ所以上の遺跡が見つかっています。

 遺跡の存在は既に1830年頃に知られていましたが、本格的な考古学調査が始まったのは20世紀の初頭で、近所のプランテーションの名前を拝借してポバティポイントと命名されました。


観光には不向き


 ポバティポイントは国定公園(ナショナルモニュメント)に指定されていますが、同時に州立公園で、どうやら実質的にはルイジアナ州が管理しているようです。世界遺産といえば無条件に面白いだろうと思って出かけると、古代人が盛り土した丘(マウンド)と発掘物を陳列した博物館があるだけで、がっかりなさるかもしれません。

 それよりも、遺跡の周囲のバイユー(ミシシッピー川南部流域やメキシコ湾岸の低湿地で流れの遅い小川)で舟遊び(⇒パンフレット)をしたり、軽いハイキングやバードウォッチをするつもりでおいでください。


アメリカの世界遺産


文化遺産 9件 自然遺産 12件

メサベルデ国立公園(1978)

 

イエローストーン国立公園(1978)

 

独立記念館国立歴史公園(1982)

 

グランドキャニオン国立公園(1979)

カホキア・イリノイ州立公園(1982)

エバーグレーズ国立公園(1979)

  

サンファン国立史跡(1983)

ランゲル-聖イライアス国立公園(1979)

  

自由の女神国定公園(1984)

グレイシャーベイ国立公園(1979)

  

モンティチェロ・ジェファーソン邸(1987)

 

レッドウッド国立公園(1980)

チャコ文化国立歴史公園(1987)

 

マンモスケーブ国立公園(1981)

タオスプエブロ国定歴史建造物(1992)

 

オリンピック国立公園(1981)

ポバティポイント国定公園(2014)

 

大スモーキー山脈国立公園(1983)

複合遺産 1件

 

ヨセミテ国立公園(1984)

 

パパハナウモクアケア海洋国定公園

(2010)

 

ハワイ火山国立公園(1987)

グレイシャー国立公園(1995)

 

カールスバッド洞窟群国立公園(1995)

 アメリカの世界遺産は22件と先進国の中で多い方ではありません。日本の数が少ないのにはユネスコの世界遺産条約批准が大幅に遅れた政治要因が影響していますが、アメリカの場合も、母体団体のユネスコとトラブルが絶えないせいがあるかもしれません。

 ユネスコは80年代に放漫財政と活動の政治化を生じさせ、1984年には米英2ヶ国が脱退し一時は存続も危ぶまれました。その後1999年に就任した日本人の松浦事務局長の改革が実りアメリカも2003年にユネスコに復帰しましたが、2011年にパレスチナの加盟をめぐり、アメリカはイスラエルとともに分担金の支払いを停止、今は投票権を凍結された状態です。

 話が逸れましたが、アメリカの文化遺産は全部で9件…うち5件がインディアンの遺跡です。歴史の浅い国とはいえ、ヨーロッパ諸国では日本の富岡製糸場のように産業革命をになった工場が数多く登録されていますから、アメリカも、もっとやる気があれば増やせる(?)はずです。ちなみに、日本の「和食」のような無形文化遺産はゼロ。私がアメリカ政府だったら、ジャズやブルース、ファーストフードなど、どんどん申請してしまうに違いありません。

 自然遺産12件のうち2件は国境をまたぎ、カナダの公園とセットで登録されています。フロリダのエバーグレーズ国立公園は流入水量の減少と富栄養化が続いて水生生物が減り、2010年に2度目の危機遺産指定を受けてしまいました。

 2010年に複合遺産に認められたパパハナウモクアケア海洋国定公園は、ミッドウェー島などハワイ諸島の北西に連なる島々の周りの海洋保護区で、観光で立ち寄ることはできません。

 これから申請するアメリカの世界遺産候補(暫定リスト)は12件、ちなみに日本は平泉の拡張を除き10件。鎌倉も暫定リストには残り、再申請の機会が来るを待っています。

アメリカ

日本

公民権運動史跡群

デイトンのライト兄弟飛行史跡

建築家ライト設計の建造物群

マウントバーノン・ワシントン邸

ジェファーソン邸とバージニア州議事堂

サンアントニオ・フランシスコ伝道所群

ホープウェル文化インディアン遺跡群

サーペントマウンド形象古墳(オハイオ)

オケフェノキー国立野生生物保護区

化石の森国立公園(アリゾナ)

ホワイトサンズ国定公園(ニューメキシコ)

ファガテリ湾国立海洋保護区(サモア)

北海道・北東北の縄文遺跡

佐渡鉱山

国立西洋美術館本館

(ル・コルビジェ作品群…関係6国)

武家の古都鎌倉

彦根城

飛鳥・藤原の宮都と関連資産群

百舌鳥・古市古墳群

宗像・沖ノ島と関連史跡群

長崎教会群とキリスト教関連史跡

明治日本の産業革命史跡

平泉…拡張申請