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2015年11月15日 (第113号)

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混迷が続く共和党の大統領予備選挙

 トップを走るトランプとベン・カーソンは政治の素人

 渡米して20年、投票権はないものの来年は身近に6回目の大統領選挙を見ることになります。今はその前哨戦の民主・共和両党の予備選挙が中盤を迎えていますが、共和党の候補は乱立。世論調査では、政治に素人の二人がトップを走っています。1年半もの長丁場の選挙戦の間に世論の風向きが様々に変わり、しばしばノーマークの候補が当選してしまうのが、アメリカの大統領選挙の面白さと怖ろしさです。

 2000年にはクリントン政権の副大統領を務めた民主党のアル・ゴアの勝利が確実視されていましたが、テレビ討論で共和党のブッシュを見下した態度が有権者の反感を買い接戦にもつれ込みました。それでも全米の得票率ではアル・ゴアが48.4%:47.9%と上回ったのですが、勝敗を決めたのは得票差わずか537票フロリダ(投票総数580万票)でした。投票機にトラブルのあった一部カウンティの再開票の末にブッシュはフロリダの選挙人25名を獲得して大統領に就任。

 翌2001年9月に同時多発テロ事件が起きアルカイダ撲滅のためアフガニスタンに派兵したのはよしとしても、2003年3月に確たる証拠もなく大量破壊兵器保有を理由にイラク戦争を開戦してしまったのは皆さんもご存じの通りです。

+++++ 不動産王 ドナルド・トランプ +++++

Donald Trump

 ドナルド・トランプはニューヨーク市クイーンズ生まれの69歳。不動産会社を経営する父親の会社で経験を積み、70年代にマンハッタンで斬新なデザインの建設プロジェクトを始め頭角を現しました。1982~87年の不動産ブームでホテルやカジノ経営に乗り出して成功し不動産王として知られるようになりましたが、その後は会社をいくつも倒産させたり訴えられたり、かなり荒っぽい経営を続けてきました。

 アメリカ人の間では、NBCのリアリティショーアプレンティス(見習い)のホストとしても有名です。トランプの会社に見習いとして応募した視聴者や有名人が様々な課題に競って取り組み、毎回1名がトランプにおまえはクビだ!(You are fired!)」と宣告されて脱落していく番組で、2012年まで12シーズンにわたり放送されました。経営者のトランプのわがままぶりが番組のウリですが、大統領候補としての数々の暴言も、庶民にはリアリティショーの視聴者の感覚で受け入れられているのかもしれません。

 兄のトラブルを反面教師に禁酒禁煙を通してきたそうですが、結婚と離婚を繰り返しダイアナ妃の追っかけをしたと噂されるほどの女好き、目立ちたがりの金満家、露骨な人種差別主義者というのが、世間全般の受け止め方ではないでしょうか?トランプが共和党候補になった場合は、民主党のヒラリー・クリントンが圧倒的に有利という予想です。

+++++ 奇跡の手 ベン・カーソン +++++

Ben Carson

 ベン・カーソンは、ミシガン州デトロイト出身で64歳の黒人外科医です。33歳の若さでジョン・ホプキンス小児センターの小児神経外科部長に抜擢され、1987年に頭部が癒着したシャム双生児を分離する手術に成功して有名になりました。2009年に放送されたテレビドラマギフティッド・ハンズ(奇跡の手)のモデルです。

 ベン・カーソンの政治的主張は基本的には共和党保守派の主張にも聞こえますが、本人が政治の素人のせいで時々リベラルにぶれ、それが多くの人の共感を呼んでいる可能性があります。中でも医療保険については、オバマケアに替わって全く新しいバラ色のシステムを提案していますが、詳細や財政的な裏付けの説明が不十分な点が最大の問題点です。イスラム教徒を差別する発言があったとも報道されましたが、イスラム法には女性やゲイの権利の侵害などアメリカ憲法とは相いれない部分があるという程度の穏やかな言動だったようです。

 ところで、今月初めにトランプを抜いて共和党候補の人気ナンバーワンに躍り出たベン・カーソンですが、早くも人気に陰りが見えています(⇒RealClearPolitcs)。出る杭は打たれるというか、トップに立つと競争相手の集中砲火を浴びて様々なボロが出てきます。半年前には本命視されていたジェブ・ブッシュが、今や泡まつ候補の仲間入りしそうになってきたのもトランプにしっかり反論できなかったからです。

+++++ クリントンvs.共和党 +++++

 民主党候補がクリントンで決まりの情勢で、共和党にクリントンに勝てる候補はいるのでしょうか?一般的に言える話ですが、共和党候補が黒人やヒスパニックだとクリントンから票が流れて有利になります。現に最近の世論調査では、黒人のベン・カーソンやキューバ系ヒスパニックのルビオが、現時点でクリントンと戦えば勝てるという結果が出ていますが、それも大統領選挙の予測の難しい点です。いよいよとなれば、外交音痴のベン・カーソンが、テレビ討論で前国務長官のクリントンに惨敗するのは確実だからです。

 トランプを相手に戦う共和党候補たちは、イスラム国に手を焼く世界各国のようなもので、早く一つにまとまらないとトランプを止められない状況に追い込まれてきています。トランプが相手なら、共和党支持者も一部はクリントンに投票しようとするかもしれません。クリントンには、きっと戦いやすくなるでしょう。