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2016年1月15日 (第115号)

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「アフルエンザ(金持ち病)」の少年が服務違反で母親と逃亡

  飲酒運転で4人ひき殺し大甘判決で執行猶予中…

 新年早々、中東ではサウジアラビアとイランが断交し、東アジアでは中国経済の不振は続き、北朝鮮が水爆(?)騒ぎを起こしました。アメリカでも、竜巻や洪水など自然災害や銃の乱射事件が後を絶たず、皆さんにお伝えしたいニュースはたくさんあるのですが、その中で私が選んだのは、アメリカの拝金主義や司法の頼りなさを実感させる実にアメリカらしい実に情けないスキャンダルです。

===== ≪アフルエンザの少年≫ =====

 スキャンダルの主は「アフルエンザの少年」の名で全米に知られるイーサン・カウチ。父親は金属製の屋根材のビジネスで成功した富豪で、テキサス州フォートワースの近郊で暮らしていましたが、2年前に父親の大型ピックアップトラックを無断で運転して路肩でパンク修理をしていた人々を跳ね、そのうち4人を死亡させてしまいました。当時16歳のイーサン少年は飲酒運転で、しかもまだ免許所有者の監督下でないと運転できない仮免許の身でした。最高40マイル/時(64q/h)の道を60マイル/時(110q/h)で蛇行し、ブレーキをかけた形跡もありませんでした。

 その晩は、両親から与えられた少年専用のお屋敷で仲間7人と飲酒パーティをしていたようです。事故の1時間前には、近所のウォルマートに出かけ仲間とビール2ケースを万引きした姿が監視カメラの映像に残っています。少年はケガをした仲間さえ見捨て事故現場を立ち去っていましたが、3時間後に見つかった時でも血中のアルコール濃度は法定限度の3倍を超えており、快楽目的で乱用される抗不安剤のジアゼパムも検出されました。

 検察は懲役20年を求刑しましたが、弁護士が「被告はアフルエンザ(金持ち病)にかかっている。トラブルを起こしても両親が金で解決してきたので善悪の判断が育たなかった。」という奇妙な情状酌量を主張。判事が10年の執行猶予を認め、年間45万ドルのカリフォルニアの超高級リハビリセンターに送る判決を下しました。

 アフルエンザとは1950年代にできた裕福(affluence)とインフルエンザ(influenza)の合成語で、当時は大量消費社会で誰もが多少は感染してしまう消費依存症を指して使われる言葉でした。精神障害として個人の病理を説明する医学用語ではありません。しかし、どうやらテキサスの少年裁判所は、一審限りで陪審制度の対象でもないようで、判事の一存で大甘の判決が確定してしまったのです。

 当該判事は女性で既に2014年に60歳で退官していますが、同様の飲酒運転事故で別の少年には懲役20年の判決を下している関係で、非難されました。

===== ≪ネットで飲酒が発覚…母親とメキシコに逃亡≫ =====

 それから2年。「アフルエンザの少年」は、再び全米の注目を集める存在に復帰しました。仲間と飲酒してビアポン(ビールを注いだコップを並べピンポン玉を投げ入れるゲーム)に興じる姿が、昨年11月にネット上で暴露されたのです。保護観察期間中の飲酒は服務違反ですから、飲酒が立証されれば執行猶予が取り消され服役しなければなりません。

Lap Dance

 イーサン・カウチは、12月10日に予定されていた保護観察官との面談に姿を現しませんでした。その時は既に母親のトーニャとともに、メキシコのリゾート地に逃亡していたのです。

 12月23日には母子でストリップクラブに現れて朝まで飲んだくれ、酒とラップダンス(ストリッパーが横たわる客に身体を密着させて踊るダンス)に千ドル使いましたが、現金が345ドル足りずにロレックスの時計を担保に差し入れたことが分かっています。

 あるいは、その頃からお金に困っていたのでしょうか?母子は安アパートに移り、12月28日にピザの配達を頼んだことから足が付いて逮捕、母子は別れ別れでアメリカに送還されました。

 二人の運命は未定ですが、まず息子のイーサンについては服務違反で4ヶ月服役し、その上で10年の執行猶予を付与される可能性が高いそうで、まだ厳しい刑とは言えません。ただし、その後に再び服務違反があった場合は、飲酒運転で殺してしまった4人に対し一人あたり最高10年の懲役を科されることになるとか…。

 また、アメリカの最重要指名手配の母親(America's Most Wanted Mom)とまで言われた母親のトーニャも逃亡幇助の罪で逮捕されて現在は拘留中。保釈金百万ドルを科され、弁護士が減額を求めて交渉しています。