高税率5州と低税率5州の対比表

 2016年夏現在で、全米各州のガソリン・タバコ・アルコール飲料の物品税についてに説明します。この記事を最初に書いたのは、リーマンショックのちょうど半年前の2008年3月でした。その前年にサブプライムローンによる不動産バブルがはじけ、各州政府や自治体が税収不足に悩んで、消費税やガソリン・タバコ・酒類の物品税を増税し始めた頃に当たります。

 当時と現在の税率を比べてみると、その差が想像以上に大きく驚かされます。各州の懐具合を個々に調べる余裕はありませんが、大半の州が諸税率を大幅に引き上げたのは間違いありません。この記事の末尾には2016年8月時点で最新の高税率5州と低税率5州の対比表を掲載しておきました。2008年の数字も併記していますから、比較してごらんください。下は、最新の州別消費税とガソリン・タバコ・酒類の物品税を地図で示した表です。

最新の州別消費税とガソリン・タバコ・アルコール飲料の物品税

地方税込み平均州別消費税(⇒拡大)

2015年ガソリン税(⇒拡大)

2015年タバコ税(⇒拡大)

蒸留酒税(⇒拡大)

2015年ワイン税(⇒拡大)

2015年ビール税(⇒拡大)


ガソリン税は道路財源


 西海岸(含むハワイ・アラスカ)のガソリン価格は恒常的に全米平均を50セントも上回り、中でもカリフォルニアは劇高ですが、格差の主因は輸送コストの差と、カリフォルニアの場合は環境に優しい低炭素燃料基準に合うガソリンの販売を義務付けているために生じる価格差です。

 ガソリン税自体について見ると、カリフォルニアの税率は2008年当時に比べごくわずかながら下がっています。これは他州の多くにも共通の現象で、州法にガソリン価格に連動し定期的に税率を見直す従価制の規定があるからでしょう。ガソリン価格は値上がりするのが当たり前の時代に税収を増やすために設けた規定ですが、シェール石油革命でガソリン価格が下がり、こうした従価制の州は思いがけない税収減に苦しんでいます。ガソリン税は、道路の補修や建設のための貴重な財源なのです。


タバコ税は教育財源


 タバコ税は慣習的に教育費に充当される例が多かったようで、こうした州では、喫煙者の減少に伴い教育予算が圧迫されるという皮肉な現象が起きています。

 私たちが暮らすケンタッキー州はバージニアと並ぶタバコの生産地で、喫煙者の割合も10人に3人と全米トップですから、かつてはタバコ税も全米最低の1箱たったの3セントでした。それが、2005年に一気に10倍の30セントに上がります。

 2008年には就任したての新知事が、税収不足を補うために「カジノ」開設を容認しようとしましたが、議会の反対で断念。そのしわ寄せでタバコ税は、3段跳びで1箱60セントになりました。それでも全米39位ですから、まだ安い方です。


酒税…お国自慢の税率は優遇のはずが!


 続いてもう少し、ケンタッキーの話をお聞きください。消費税と違い物品税は価格にコミ(込み)ですから、現地ニュースを注意深くフォローしていないと、税率が上がっても気がつきません。近年、アルコール飲料の値段が高くなったと妻の満里がこぼすので、酒税の税率を調べてみると、ワインに至っては、税率が全米で断トツトップと派手に増税されていたので驚きました。

 しかも、これまでは6%の消費税が免除されていたのに、今年(2016年)からアルコール飲料は食品区分から除外され、課税対象になってしまっていました。2008年時点では、ケンタッキーの酒税は全米で最も安い方だったはずです。ケンタッキーは、バーボンウイスキーの本場ですから、蒸留酒の税率は低くて当たり前です。ついでにビールやワインの税率も低くて助かったのですが、タバコ税だけ上げては、タバコ農家や喫煙者に不公平だということになったのでしょうか。

 ケンタッキーの消費税の税率は1960年から6.00%で変わっていません。それは結構なことですが、私たち愛飲家には酷な仕打ちです。ケンタッキーには禁酒指向のキリスト教保守派が多いせいかもしれませんが、他の州では相変わらず名産品の税率優遇を続けています。

 ケンタッキーと張り合うタバコ産地バージニア州のタバコ税は、2008年から1箱30セントのままで据え置きで、全米50州の低い方から第2位。ビールの都ミルウォーキーがあるウィスコンシン州や、「バドワイザー」の本拠セントルイスがあるミズーリ州のビール税も、税率据え置きで低い方からタイの第2位。生活費が何でも高いカリフォルニア州でさえ、名産のワインの税率だけは低い方から第2位です。

各種物品税の高税率5州vs.低税率5州 ( 白字 は2008年時点の順位と税率 ⇒詳細)

 

1位

2位

3位

4位

5位

2016年

州平均の

一般消費税

(地方税合算後)

テネシー

9.46%

アーカンソー

9.30%

ルイジアナ

9.0%

アラバマ

8.97%

ワシントン

8.90%

カリフォルニア 7.25%

テネシー 7.00%

ニュージャージー 7.00%

ミシシッピー 7.00%

ロードアイランド 7.00%

オレゴン

なし

デラウェア

なし

ニューハンプシャー

なし

アラスカ(州税なし)

1.78%

ハワイ

4.35%

オレゴン なし

モンタナ なし

アラスカ 州税はなし

コロラド 2.90%

多数 4.00%

2015年

ガソリン税

 (/ガロン)

連邦税

 $0.184

ペンシルバニア

$0.5160

ニューヨーク

$0.4599

ハワイ

$0.4510

カリフォルニア

$0.4235

ワシントン

$0.3750

カリフォルニア $0.455

コネチカット $0.441

ニューヨーク $0.412

イリノイ $0.395

ミシガン他1州 $0.360

アラスカ

$0.1225

ニュージャージー

$0.1450

サウスカロライナ

$0.1675

オクラホマ

$0.1700

ミズーリ

$0.1730

アラスカ $0.080

ワイオミング $0.140

ニュージャージー $0.145

サウスカロライナ $0.168

オクラホマ $0.170

2015年

タバコ税

  (/箱)

別に連邦税

 $2.11

ニューヨーク

$4.35

マサチューセッツ

$3.51

ロードアイランド

$3.50

コネチカット

$3.40

ハワイ

$3.20

ニュージャージー $2.575

ロードアイランド $2.460

ワシントン $2.025

アリゾナ $2.00

アリゾナ他4州 $2.00

ミズーリ

$0.17

バージニア

$0.30

ルイジアナ

$0.36

ジョージア

$0.37

ノースダコタ

$0.44

サウスカロライナ $0.070

ミズーリ $0.170

ミシシッピー $0.180

バージニア $0.300

ケンタッキー $0.300

2016年

蒸留酒税

 (/750㎖)

度数40%

別に連邦税

 $2.14

ワシントン

$33.54

オレゴン

$22.74

バージニア

$19.86

アラバマ

$18.25

アラスカ

$12.80

ワシントン $19.43

カリフォルニア $19.26

アラバマ $14.78

バージニア $14.54

アラスカ $12.80

ウェストバージニア

$2.11

ミズーリ

$2.00

コロラド

$2.28

テキサス

$2.40

カンザス・ルイジアナ

$2.50

ワシントンDC $1.50

メリーランド $1.50

ウェストバージニア $1.87

ケンタッキー $1.92

ミズーリ $2.00

2015年

ワイン税

 (/750㎖)

度数11%

別に連邦税

 $0.21

ケンタッキー

$3.18

アラスカ

$2.50

フロリダ

$2.25

アイオワ

$1.75

ニューメキシコ

$1.70

アラスカ $2.500

フロリダ $2.250

アイオワ $1.750

アラバマ $1.700

ニューメキシコ $1.700

ルイジアナ

$0.11

カリフォルニア

$0.20

テキサス

$0.20

ウィスコンシン

$0.25

カンザス・ニューヨーク

$0.30

ルイジアナ $0.110

ニューヨーク $0.189

カリフォルニア $0.200

テキサス $0.204

ウィスコンシン $0.250

2015年

ビール税

 (/12oz)

度数4.7%

別に連邦税

 $0.05

テネシー

$1.29

アラスカ

$1.07

アラバマ

$1.05

ジョージア

$1.01

ハワイ

$0.93

アラスカ $1.070

アラバマ $1.050

ハワイ $0.930

サウスカロライナ $0.770

ノースカロライナ $0.532

ワイオミング

$0.02

ミズーリ

$0.06

ウィスコンシン

$0.06

ペンシルバニア$0.08

オレゴン・コロラド$0.08

ワイオミング $0.019

ウィスコンシン $0.060

ミズーリ $0.060

ウェストバージニア $0.06

ケンタッキー他2州 $0.08