アメリカの 「育児と教育」・e-ガイド(印刷ページ

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K-12(義務教育)

「幼1-小5-中3-高4」が最多数派 ★私立の宗教教育に注意 ★チャーター校とマグネット校、優等生クラス


「幼1-小5-中3-高4」が最多数派


アメリカの教育制度 

 「6-3-3-4」の日本の学制は、戦後、アメリカの進駐軍によって持ち込まれたものですが、本家アメリカでは「6-3-3」の区割りが州や自治体によってバラバラです。

 中学の呼び方も「6-3-3」なら「ジュニアハイ」ですが、高校が4年と長い地域では「ミドル」、中学が4年で2期に分かれている地域では前半2年が「インターミディエート」と複雑に変化します。

 最多数派は「5(小学校)-3(中学)-4(高校)」ですが、全米レベルで話す時にはややこしいので、中学や高校の学年も、小学校からの通算で8年生(8th Grade)や9年生(9th Grade)と呼ぶこともあります。

 義務教育も、厳密に「義務」と決められた期間は州別にマチマチですが、公立校が無償教育を施してくれるK-12(ケイ・トゥ・トゥエルブ)が「義務教育」と単純に理解しても差し支えないでしょう。 Kは幼稚園(キンダーガーテン=Kindergarten)の頭文字で、それから高校の最終学年12年生までの期間です。

 (公立)幼稚園も地域次第で、1年保育の場合も2年保育の場合もあります。「年少組」はプレ-キンダーガーテン(Pre-Kindergarten)と呼ばれたり、「年少」と「年長」を合わせてプレスクール(Preschool)と呼んでみたり、一つの言葉が別の地域で違う意味に使われていることもありますからご注意ください。

 義務教育が5歳で始まるのは、アーカンソー、コネチカット、デラウェア、メリーランド、ニューメキシコ、オクラホマ、サウスカロライナ、バージニアの8州とワシントンDCだけですから、それ以外の州ではお子様を幼稚園に通わせる法的な義務はありません。


私立の宗教教育に注意


 学校には、公立(Public)、私立(Private)と日本にはないホームスクール(Home School)を合わせ3つの形態があります。

 大都市では、学区内の公立校の質に問題があり、お子様を私立校に通わせないといけない地域もあるでしょう。また、公立校の教育に飽き足らないご両親には、英才教育を期待してお子様を私立校に通わせる選択もあります。

 しかし、私立校に通わせても安心できるのは、アメリカ暮らしが長くて最初から英語に不自由しない子供たちだけです。日本から来たばかりのお子様には、外国の学校で外国人の子供たちと仲間になるだけで精一杯。むやみにお子様に負担をかけてはいけません。

 学費は年間数千ドルの単位ですが、千差万別ですから個別にお調べください。大多数の私立校はキリスト系です。その場合は、信者になる必要はないとしても、お子様本人も含めご両親が、ある程度、キリスト教を理解していないとトラブルになります。

 教科には「宗教」の時間があり、テストでは聖書や教義に従った答案を書かなければ点が取れません。キリスト教系の学校の中にも宗教色の薄い学校もありますから、お子様を入学させる前に、しっかり宗派や教育方針を確認しておきましょう。

 特に、キリスト教福音派の学校では、ダーウィンの「進化論」を否定する科学を教えているかもしれません。アメリカのキリスト教系私立校を、日本のミッション・スクールと思い込んでは危険です。


チャーター校とマグネット校、優等生クラス


 公立校の中にも、チャーター・スクールとかマグネット・スクールと呼ばれる英才教育を施す学校があります。一般の公立校が、優等生を集めて別カリキュラムを教えるギフティッド・クラスを設けていることもあります。日本人は、優等生を特別扱いするのは不公平と思いがちですが、アメリカ人の公平感覚は違うようで、優秀な子の才能を伸ばすことは、広く社会全体の利益と考えられています。

 チャーター校は、市民団体が、自治体の一般公立校と異なる独自のチャーター(charter=教育指針)を定めて設立する(運営面では私立校的な要素を持つ)公立校です。特定の分野に特化した教育を施す学校や不登校児を救済する目的の学校まで様々なタイプの学校があります。

 マグネット校は、もとをたどると、都市人口のドーナッツ化現象で白人が郊外の新興住宅地に移り、公立校が郊外の「白人校」と旧市街の「黒人校」に実質的に分化しつつあった頃に考案された制度です。市の中心部に魅力的な学校を作り、郊外から通学する白人生徒を増やすのが目的でした。初期のマグネット校は、全て越境通学可能な公立校だったのです。

 今では、各地に、語学や芸術系、理数系など多彩なマグネット校やマグネットクラスがある一方で、一般公立校と同じように学区でしばられた「より教育熱心」な学校もあります。見るままを率直に言えば、富裕層が住む地域のマグネット校は成績のよいマグネット校で、貧困家庭が多い地域のマグネット校は学力を向上させる「努力目標」を掲げたどちらも普通の学校です。マグネット校は宿題の量が多く、家庭教師を雇ったり、ご自身で手伝ったり、親御さんの負担もたいへんです。