英語ぎらいの方でも、アメリカに住む以上は、ご自身やご家族の身の安全を守るために必要な知識だけは身につけておきましょう。


幻の非常事態警報システム


 最初に、最もこわい話をしましょう。非常事態警報システム(Emergency Alert System)は、アメリカの安全をおびやかす非常事態が発生した場合に、あらゆる放送メディアを通じて大統領が国民に10分以内に語りかけることを可能にするシステムです。

 1994年に導入されて以来、2001年9月11日の同時多発テロの際も含め、実際に発動されたことは一度もありません。周波数や受信方式の壁を越えて、全てのラジオ/テレビ放送が非常事態を伝える決まりになっています。いつまでも、幻のシステムであってほしいものです。


気象警報と専用ラジオ


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危険気象警報ラジオ

 他方、もっともっと身近なリスク…竜巻や洪水など危険な気象情報を伝えるのは全米海洋大気局(NOAA=National Ocean & Atmosphere Administration)です。

 危険な気象が近づくと、各地気象台が竜巻(Tornado)、雷雨(Thunder Storm)、吹雪(Winter Storm)、洪水(Flash Flood=鉄砲水など)等々の警報(Warning)や注意報(Watch)、または予報(Advisory)を出すところは全く日本と同じです。

 ただ、大陸性の気象は、海洋性気候の日本の気象より荒々しいので、「アメリカの注意報」を「日本の警報」に換算するくらいの覚悟をしてください。

 各種警報が出ると、ローカルのテレビ局は画面の隅にサインを出したり字幕で知らせたり、ケース・バイ・ケースで放送を中断して気象情報の実況を始めます。ラジオも同様です。

 特に、竜巻の危険が高まると、各地のサイレンが鳴ります。外に出ているときは、ラジオのスイッチを入れておけば、詳しい情報は聞き取れなくても、警報音で危険がすぐそばに迫っていることだけは分かります。近くに堅固な建物を探して、直ちに逃げ込みましょう。

 皆さんのお住まいは比較的丈夫な方でしょうが、それでも竜巻に対して「絶対安全」はありません。家の中でも特に安全な部屋に避難して布団に包まっているのが一番ですが、夜、寝入っていると逃げられません。そこで、NOAAの電波を直接受信する警報専用ラジオが活躍します。この放送の電波は162MHzの超短波(VHF)を使用しているので、一般のFMラジオでは受信できません。

 このラジオは、ときどきスーパーのレジの近くなど目立つ場所に陳列して売られています。普段は静かにしていますが、緊急時には突然鳴り出して皆さんを叩き起こしてくれる「不寝番」…でも、説明書をよく読まないと、遠くの竜巻でも空騒ぎする「狼少年」になってしまいますから設定には気をつけてください。竜巻など気象上の非常時だけではなく、保安上の非常事態が起きた場合にも有効なのだそうです。

 竜巻警報は、サイレンの場所が遠くだと、寝ていて気がつくのは難しいかもしれません。

商品例: Midland Radio WR-300


ローカルラジオ局が生命線


 被災後の生活でも、ラジオは活躍します。私たちが住むケンタッキー州レキシントンでも、フリージング・レイン(木々や道路が凍りつく雨)で電線が寸断され、摂氏で零下の寒波の下で停電が何日も続いたことがあります。私たち家族はホテルに避難しそこなって、暖炉の前で身を寄せ合って寒さをしのぎましたが、いったい停電はいつまで続くのか不安はつのるばかり…テレビも見れずインターネットも使えない状況で唯一の情報源がラジオでした。

 その間、ローカルラジオ局の一つが緊急番組を組み、市民からの電話情報を24時間ぶっ通しで受け付けていました。「ほかにも困っている人が大勢いる」と知れるだけでも気休めになるものです。ラジオの電池が切れないように、多少は買い置きしておきましょう。

 家でよく使うラジオと車のラジオに、ローカル・ニュースや市民との電話トークの多いラジオ局の周波数を、あらかじめセットしておくと、いざという時に助けになります。